じゃあ、あんたが作ってみろよ
第9話 おにぎり食べて、元気だせ!
12月2日(火)放送分
今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第129回(9月25日放送)で、テレビの前の視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? 残すところ、あと2回となり、過去に登場したさまざまな人気キャラクターが各場面で突然登場。一瞬たりとも目が離せない興味深い回となった。テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時12分の74.1%だった。一体、どんな場面だったのだろうか?
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「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせたかしさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。
第129回は、2年がかりで完成したテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」が放送され、のぶ(今田さん)と嵩(北村匠海さん)をはじめ、メイコ(原菜乃華さん)と健太郎(高橋文哉さん)、たくや(大森元貴さん)らが思いを巡らせる。これまで登場した、さまざまな登場人物たちがアニメの開始を知り、のぶや嵩を祝福する場面も続いた。
テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた「注目度」のグラフは、70%台の時間が長く、視聴者は比較的、画面にクギヅケ状態だったことがうかがえる。序盤に一度、短いピークがあり、中盤から終盤にかけ、70%台が長く続くピークがあった。
序盤のピークは午前8時3分の71.8%と、続く午前8時4分の71.0%。3分台は、まず“ヤムおんちゃん”こと草吉(阿部サダヲさん)が登場する。街角の電気屋のテレビに見入っていると、幼い頃の嵩にそっくりな少年(木村優来さん)がやって来て「ジャムおじさんですか?」と問いかける。草吉は「違う! 屋村だ」と返し、少年の髪の毛を触ると笑顔で去って行った。ちなみに少年は幼い頃の嵩にそっくりなはずで、木村さんは嵩の幼少期を演じていた。
午前8時3分の後半から午前8時4分の前半は、アニメの放送を嵩と見た後、のぶが亡き父・結太郎(加瀬亮さん)の帽子に「うちの夢はアンパンマンがかなえてくれたみたいや」と報告する場面。そんな静かなシーンが続いた後、4分台後半は一転、場面が高知の女学院へ。のぶは、女学院のため嵩が描いたキャラクターを贈呈している。よく見ると、受け取っているのは、のぶを厳しく指導した黒井(瀧内公美さん)。進行役を務めているのはのぶの幼なじみで校長となったうさ子(志田彩良さん)だ。
午前8時2分台には、手嶌治虫(眞栄田郷敦さん)、代議士・薪鉄子(戸田恵子さん)の事務補助員だった世良(木原勝利さん)も登場。視聴者は「次に登場するのは誰?」状態だったはずだ。そんな雰囲気の中、ヤムおんちゃんと黒井先生の再登場は、視聴者の視線を確実につかんでいたようだ。
注目度はその後、いったん下がるが、再び上昇。午前8時10分から70%台に再突入する。午前8時10分(73.1%)は忙しくなった嵩の事務所の様子が描かれるが、のぶの様子がどうにもおかしい。10分台の後半は、茶室でのぶが星子(古川琴音さん)に何かを頼んでいる場面が続く。夕方なのか、薄暗い茶室は少し不穏な感じを伝える。
午前8時11分(70.6%)は、のぶと星子の場面の続き。「どうして私なんですか?」という星子に、のぶは「みんなが見向きもしない時から、あなたはアンパンマンを好きになってくれた」と静かに語りかける。
第129回の最高値74.1%を記録した午前8時12分は場面が変わり、嵩が自宅に帰ると星子が1人待っていた。星子は「きょうからこちらで働くことになりました」という。「うちのかみさんは?」と聞く嵩に、「奥様は病院に行かれました」と星子は伝える。誰かのお見舞い? 嵩がそう考えた後、のぶが病気だとようやく気付く。不穏な雰囲気を感じていた視聴者も「やっぱり」という展開だったかもしれない。この場面がこの日の頂点だった。
病院で診察を受け、手術することが決まったのだろう。川を見ながら、物思いにふけるのぶを嵩が迎えに行く。午前8時13分以降は、この2人のシーンだ。午前8時13分の注目度70.0%の後は60%台後半にやや下がるが、最後まで比較的高い注目度のまま、翌日の最終回へと続く形で終わった。
ちなみに、中盤で注目度が下がったのは午前8時5分台後半から始まった蘭子(河合優実さん)と八木(妻夫木聡さん)の2人のシーン。難民キャンプの取材で海外に出かけるという蘭子に、八木は「誕生日には少し早いけど」とバースデーカードを贈る。関係が進展するのか、どうなのか、ずっと気がかりだった視聴者にとっては、この2人が出るだけで注目シーン。これまでは注目度が高まることがことが多かったのに、この日は意外な反応だった。
9月23日の第127回で、自分の戦争体験を打ち明け、慟哭した八木を、蘭子がそっと抱き寄せるシーンがあった。2人の関係の進展がうかがえたため、視聴者の関心はやや薄れたのだろうか?
蘭子と八木の会話は淡々と続く。2人のシーンが始まって約3分後、午前8時8分台の中盤。何気なくカードを開いた蘭子は、中に指輪が張り付けられていることに気づく。視聴者にとっても不意打ちだったかもしれない。注目度は午前8時6分を底に、緩やかに上昇していたが、午前8時8分も66.6%とそれほど高くない。
指輪を指でなで、八木の後姿を見つめる蘭子。笑顔をかみ殺すように、無言のまま八木の事務所を去ろうとする。その時、八木が一言。「帰ってきたら、考えてくれ」。蘭子は「はい」とはっきり答えると、事務所を出ていく。このあたりが午前8時9分台。ここでようやく注目度の上昇カーブは角度を増し、一気に69.9%に。午前8時10分台以降の70%台連発につながっていった。
八木のサプライズのプレゼントは視聴者をもだましたのかもしれない。そんな感じがした、この日の注目度の推移だった。
活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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