解説：「爆弾」20代キャスト3人に注目　歌舞伎の名門生まれ、“俳優界のサラブレッド”ら話題作で活躍の若手注目株

　山田裕貴さんが主演する映画「爆弾」（永井聡監督、10月31日公開）。個性派キャストが多数登場する中で、輝きを放つ20代の若手注目株の3人にスポットを当てて紹介する。

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　映画は、謎の爆弾魔と警察との取調室での頭脳戦を描き、「このミステリーがすごい！ 2023年版」（宝島社）などで1位を獲得した呉勝浩さんのベストセラー小説「爆弾」（講談社）が原作。酔った勢いで店員に暴行を働いた一人の謎の中年男が警察に連行される。「スズキタゴサク」と名乗った男（佐藤二朗さん）は、霊感が働くと称して東京都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告。秋葉原での爆破を皮切りに、この後1時間おきに3回爆発すると告げる。交渉人の類家（山田さん）ら刑事たちの問いかけをのらりくらりとかわしつつ、次第に爆弾に関する謎めいた“クイズ”を出し始める……というストーリー。

　◇謎の青年・石川辰馬役の片岡千之助

　今作では、歌舞伎俳優の片岡千之助さんが正体がまだ明かされていない謎の青年・石川辰馬を演じている。長髪に虚ろな瞳、一目ででただならぬ気配を放つそのたたずまいは、不穏な空気を漂わせ、想像力と好奇心をかきたてられる。本編を見たファンからは「意外なハマリ役」との声も上がり、豪華キャストの中でも圧倒的な存在感を放つ。スズキタゴサクに続く“謎の存在”なのか、それとも爆破事件の行方に関わる人物なのか……。

　辰馬を演じる千之助さんは、歌舞伎俳優の片岡孝太郎さんの長男として2000年3月に生まれた25歳。4歳で歌舞伎座の初舞台を踏んだ。映画は「メンドウな人々」（2023年）で初主演、「わたくしどもは。」「九十歳。何がめでたい」(ともに2024年）など映像作品で着実に実績を積み重ねてきた。昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」では敦康親王役を好演し話題となった。

　◇取調室でタゴサクに翻弄されていく刑事・伊勢役の寛一郎

　取調室でスズキタゴサクの事情聴取に立ち会い、見張り役を務める野方署の巡査長・伊勢を演じているのは寛一郎さん。伊勢は書記係として取調べ内容をリアルタイムで共有しながら、タゴサクの言動に翻弄され、次第にその異様な空気にのみ込まれていく……。出演発表後、SNSでは「雰囲気が曲者キャラの伊勢に合ってる」「不思議と親近感がある」といった声が相次ぎ、原作でも重要人物となる伊勢役に大きな期待が寄せられている。岡田プロデューサーは「内に秘めた闘志がある方。実は伊勢がどのように取調室で動いているのかは、非常に重要」と、山田さん、佐藤さん、渡部篤郎さんといった実力派が火花を散らす取調室の中で、寛一郎さんが放つ存在感に信頼を寄せる。

　父は佐藤浩市さん、祖父は三國連太郎さんという俳優界の“サラブレッド”ともいえる寛一郎さんは1996年8月生まれの29歳。2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」や映画「月の満ち欠け」、2023年の映画「首」など数々の話題作に出演してきた寛一郎さん。第77回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞した「ナミビアの砂漠」（2024年）で鮮烈な印象を残した。放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」では、主人公のトキの結婚相手、銀二郎役として朝ドラ初出演を果たしている。

　◇刑事昇進を狙う野心家の巡査部長・矢吹役の坂東龍汰

　伊藤沙莉さんが演じる巡査・倖田とコンビを組む沼袋交番勤務の巡査長・矢吹を熱演しているは坂東龍汰さん。矢吹は、過去の因縁から先に刑事になった伊勢（寛一郎さん）をライバル視しつつ、この事件で手柄を立てて刑事へ昇進することを狙う野心家だ。東京中に仕掛けられた爆弾捜査に全力で取り組み、「有力なタレコミ」をきっかけに捜査を加速させるが、やがて予期せぬ事態に直面する。岡田プロデューサーは「伊藤さんと矢吹役の坂東龍汰くんとの息がぴったりだった。坂東くんはとてもフレンドリーで、明るい空気を作ってくれた」と太鼓判を押す。

　1997年5月生まれ、28歳の坂東さんは、ドラマ「ライオンの隠れ家」（2024年）で自閉スペクトラム症の青年、映画「ルノワール」（2025年）では主人公の少女が出会う危うさを秘めた青年という難役を演じた。10月期のドラマ「シナントロープ」（テレビ朝日系）にも出演するなど、話題作に次々出演し、確かな演技力で今、最も注目される若手俳優の一人だ。

　そうそうたるキャストの中でキラリと光る演技を見せる20代の3人。「爆弾」のスリリングな展開を楽しみながら、3人の演技にも注目したい。