良いこと悪いこと
最終話 真犯人、だーれだ?
12月20日(土)放送分
高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第25回(10月31日放送)で、テレビの前の視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時10分の77.2%だった。
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「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。
第25回は、いよいよヘブン(トミー・バストウさん)が松江中学校の教壇に立つ日が迫る。前日の第24回あたりから、様子がおかしいヘブン。何がそんなに彼をいら立たせているのか? ヘブンの意外な事実が明らかになるのが第25回の見どころだ。
テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた注目度。ヘブンが登場し始めた今週は、画面にクギヅケになっていることを示す「高い数値」が、ドラマの冒頭からエンディングまで続くことが多かった。ただ、この日の第25回は少しグラフの趣が違った。
ドラマは、知事の江藤(佐野史郎さん)と、ヘブンの通訳を務める錦織(吉沢亮さん)の“密談”で始まり、オープニングへ。主題歌が流れた午前8時2分には、注目度が55.8%まで下がるが、そこから緩やかに上昇し始める。午前8時8分に71.1%と、この日初めて70%を超えた後、わずかに下がるが、午前8時10分には最高値の77.2%まで再び上昇した。その後はやや下がるものの、エンディングまで70%台前半をキープした。
この日初めて70%台に突入した午前8時8分は、トキ(高石さん)がヘブンと握手した時、感じたことを錦織に伝え始めた場面。花田旅館にやって来た錦織が、ヘブンに生徒が待っているので学校へ行こうと声をかけるが、障子戸は開かない。錦織が無理やり戸を開けようとすると、トキが声をかける。
「あの時、先生の手は震えちょったんです」。トキは、異国から初めての国に来て、あまりの期待度に怖くなって、怒っているのではないかと自身の推測を語る。第22回に、トキがヘブンと握手している場面があり、その瞬間、トキは何かを感じていた様子だったが、視聴者にはよくわからなかった。恋愛につながる「ビビビ」という感触でもあったのかと思ったが、実は「震え」だったのだ。
最高値の午前8時10分は、トキの言葉に気付きを得た錦織が障子戸を開け、中に突入する場面。トキは「今はそっとしておいてあげては?」と提案したが、錦織は「これは天岩戸でしょうか?」とヘブンに声をかけると、中へ入る。
「出て行け!」と声を荒らげるヘブンに、錦織は「ヘブン記者!」と言い返す。知事の江藤から、ヘブンは教師ではなく、古事記を読んで日本に興味を持ち、滞在記を書くために来日した新聞記者だと教えてもらっていたのだ。ヘブンのイライラや不安の根っこはこの意外な事実にあったことが分かった瞬間だった。
午前8時11分以降は、錦織とヘブンのやり取りが続く。ヘブンは部屋にこもっている間、日本語を猛勉強していた。机の書き物からそのことを感じた錦織は「日本語はいりません。教育的な言葉も必要ありません。あなたが話す言葉を、あなた自身を、みんなは待っています。それでも困ったら、私がいます」と伝える。ヘブンが「ワタシ……ダイジョウブ?」と尋ねると、錦織は「あなたを、待っています」と返答。ヘブンは安心した様子で「アイムハングリー。ハラヘッタ」とつぶやく。
その後、ヘブンはスーツ姿に着替え、朝食を食べ始める。「いただきます」と朝食の膳の前に座るヘブンの姿に、「なんとかいけそうだ」と安どする錦織。「私も(ヘブンを)人間扱いしていなかった」と反省の弁を述べる。だが、女中のウメ(野内まるさん)らにきつく当たる様子は変わらない。
「怖いからとかじゃなく、ああいう人なんじゃないか」という錦織に、トキも「そげかもですね」と返す。思わずクスっと笑ってしまう。世の中、そんなにわかりやすくできていない。人の心も、簡単に理解できるほど甘くない。おさまりのいい方向に、簡単に物語を進めないから「ばけばけ」は面白い。
活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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