解説:今年で放送からもう10年 三谷幸喜が英雄的武将の生涯描いた、屈指の戦国大河とは

大河ドラマ・ストーリー「真田丸」前編(NHK出版)
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大河ドラマ・ストーリー「真田丸」前編(NHK出版)

 俳優の仲野太賀さん主演の2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」が、1月4日にスタートする。豊臣秀長を主人公に、兄・秀吉とともに強い絆で天下統一という偉業を成し遂げる豊臣兄弟の奇跡を描く、夢と希望の下剋上サクセスストーリーだ。そんな「豊臣兄弟!」と同じく戦国時代を舞台にし、2016年に放送された大河ドラマが「真田丸」だ。放送から10年、どんな作品だったのか、振り返ってみたいと思う。

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 ◇堺雅人が真田信繁を熱演 「ナレ死」や「超高速関ヶ原」も

 「真田丸」は、真田幸村の名でも知られ、信州の小さな領主のもとに生まれた信繁が、家族とともに知恵と勇気と努力で乱世を生き抜く姿が描かれた。ドラマのタイトルは、大坂冬の陣で信繁(幸村)が大坂城の最大の弱点となる南側に作った出城に由来する。三谷幸喜さんが、2004年の「新選組!」以来、12年ぶりに大河ドラマの脚本を手がけ、主演を堺雅人さんが務めた。

 その後、2022年の「鎌倉殿の13人」で、三度大河ドラマを執筆することになる三谷さんは、最新の歴史研究の成果を反映しつつ、戦国最後のヒーロー・真田信繁の生涯を、三谷流の会話劇とユーモアを交えながら物語をドラマチックに展開させた。信繁役の堺さんは当時42歳で、2013年のTBS系日曜劇場「半沢直樹」で確立した人気俳優の地位を不動のものとする熱演を披露。同作は10年たったいまも屈指の戦国大河として、多くのファンに記憶されている。

 ドラマの語りを、当時NHKのアナウンサーだった有働由美子さんが担当。有働さんのナレーションのみで登場人物の死を伝えるパターンも多く、以降「ナレ死」という呼び方が広く使われるようになった。

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 また、人気ゲーム「信長の野望」シリーズの生みの親として知られるシブサワ・コウさんが技術提供した3DCGマップも「分かりやすい」と評判に。さらに、信繁目線のドラマゆえ、“天下分け目の合戦”「関ヶ原の戦い」でさえも、真田家の忍び・佐助(藤井隆さん)の報告だけで終わらせてしまい、その驚きの手法は「超高速関ヶ原」などと呼ばれ、大きな反響があった。

 ◇草刈正雄が真田昌幸役で抜群の存在感 “俳優・高木渉”がブレーク

 「真田丸」は、信繁目線の「敗者の物語」であると同時に、真田の「家族の物語」でもあった。信繁の兄・信幸役で大泉洋さん、姉・松役で木村佳乃さん、母・薫役で高畑淳子さん、祖母役で草笛光子さんが出演。そういった中で抜群の存在感を放ったのが、信繁の父・真田昌幸を演じた草刈正雄さんだ。

 昌幸は、知略軍略に優れ、豊臣秀吉に、油断ならない「表裏比興の者」といわしめた天才武将だ。1985~86年放送のNHKの時代劇「真田太平記」で自身も信繁(役名は幸村)に扮(ふん)した草刈さんは、「何か因縁めいたものを感じながら(本人談)」信繁の“偉大な父”昌幸を、時に人間くさく、野生味もたっぷりに表現。第35回で、昌幸と信繁、信幸が敵味方に分かれることを決めた“犬伏の別れ”では視聴者の涙を誘い、第38回で昌幸が亡くなった際には、当然のように「ロス」が叫ばれた。

 また、真田家(一族/家臣)のキャストからは、声優の高木渉さんが俳優としてブレーク。それまでテレビアニメ「機動新世紀ガンダムX」の主人公のガロード・ラン役をはじめ、数々のアニメ作品に参加してきた高木さんだが、テレビドラマに出演するのは「真田丸」が初めてだった。憎めない人柄で真田家をもり立てていく松の夫・小山田茂誠を好演。その後も2021年の「青天を衝(つ)け」、2025年の「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」といった大河ドラマに加え、朝ドラ(NHK連続テレビ小説)、日曜劇場にも起用されるなど、順調に俳優キャリアを重ねている。

 さらに信繁の右腕・矢沢三十郎頼幸役を務めた迫田孝也さんも「真田丸」出演をきっかけに、その名を知られるようになった。2年後の2018年の大河ドラマ「西郷(せご)どん」では、薩摩ことば指導を担当し、江藤新平役で本編にも登場。2022年の「鎌倉殿の13人」では、人のいい源範頼役でも話題に。日曜劇場への出演も多く、いまや“日曜の男”の名をほしいままにしている。

 ◇「目が笑っていない」秀吉、臆病で慎重な性格が強調された家康

 戦国大河には欠かせないものの一つが、人気武将・大名。特に“三英傑”と呼ばれる、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は毎回注目を集めるが、「真田丸」では、それぞれ吉田鋼太郎さん、小日向文世さん、内野聖陽さんが演じた。

 2シーンのみの登場となったが、その威圧感と狂気性で鮮烈な印象を残した吉田鋼太郎“信長”。喜怒哀楽の激しさと「目が笑っていない」ことで視聴者からは「怖すぎる」といった声も多く上がった小日向文世“秀吉”。ちなみに小日向さん自身は「子供のような無邪気さ」と「恐ろしいくらいの嫉妬(しっと)心」、そして「政治が絡んだ時の冷静さ」の三つを意識して役に臨んだことをのちに語っている。

 最後に内野聖陽“家康”だが、ポジションとしては主人公・信繁の“最大最強の宿敵”でありながら、従来のイメージとは異なる臆病で慎重な性格が強調されていて、その振る舞いにはコメディー要素も含まれていた。なお同作で、家康の嫡男・徳川秀忠を演じたのが星野源さん。「真田丸」と同じ年の2016年10月期には、新垣結衣さんと共演したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)が放送され、星野さんが歌う「恋」とともに大ヒット。この時期「真田丸」と「逃げ恥」によって、音楽家・俳優としての人気が決定づけられたことを覚えているファンも多いのではないだろうか。

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