穏やか貴族の休暇のすすめ。:異彩を放つ異世界アニメ 独特のテンポを表現 能田健太監督インタビュー

アニメ「穏やか貴族の休暇のすすめ。」の一場面(c) 岬・TOブックス/穏やか貴族製作委員会
1 / 54
アニメ「穏やか貴族の休暇のすすめ。」の一場面(c) 岬・TOブックス/穏やか貴族製作委員会

 小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた人気ライトノベルが原作のテレビアニメ「穏やか貴族の休暇のすすめ。」が、1月7日からテレビ東京、BSテレ東ほかで放送される。コミカライズ、ドラマCD、舞台、朗読劇などのメディアミックスも展開されている人気作で、アニメは能田健太さんが監督を務める。能田さんがテレビアニメシリーズの監督を務めるのは初めて。能田監督に“初監督作”の制作の裏側を聞いた。

あなたにオススメ

 ◇日常を丁寧に描く

 「穏やか貴族の休暇のすすめ。」は、ファンタジー世界のとある大国で宰相として名を馳せていた青年・リゼルが、別の異世界へと転移してしまう。元の世界に戻れるのか分からない状況ではあるが、リゼルは「休暇だと思って楽しみます」と、落ち着いた様子で、優れた頭脳と話術を生かし、人々の心をつかんでいく。誰にもこびず誰にも従わない上級冒険者・ジルを相棒にしたリゼルは、自らも冒険者となり、異世界生活を満喫する。

 能田監督はこれまで「ぐんまちゃん」「デュエル・マスターズ!」などで演出を担当してきた。「アニメ業界は10年くらいで、最初は制作進行で、演出をやり始めて6、7年です。今回のアニメの話をいただいたのは2年くらい前なので、キャリア的に少し早いかな?と思っています」と若手の監督だ。

 「穏やか貴族の休暇のすすめ。」は、ゆったりとした独特の空気感が魅力だ。アニメ化にあたり、その空気感を表現しようとした。

- 広告 -

 「この独特の空気感をアニメとして表現するのは難しい。アニメは何かが起きて、そこに興味をひかれるところがありますが、それをいかにせずに、興味を持ってもらうか。普通の会話をしていて、キャラクターや声の強さが大事になります。重要なことをテンポよく聞かせて、話が進んでいくわけではなく、普通の会話が面白い。ゆったり見せることが大切なので、そこを極力失わないようにしたいとシナリオ会議でも言っていました」

 日常を丁寧に描いていくことで、独特の空気感やテンポを表現しようとした。

 「顔のアップは少ないと思います。もちろん顔が大事ですし、引きが多いと現場に怒られるんですけどね(笑)。引きでゆったり見せながら、いざという時にアップになり、顔がきた!と思っていただきたいと考えています」

 ◇分かりやすいアニメとは真逆

 異世界の表現にもこだわった。いわゆる異世界アニメとはまた違う表現を目指した。

 「いわゆる異世界アニメは、皆さんが想像するものがありますし、もちろんその方が記号的に分かりやすく、異世界らしく見えますが、僕はそれではつまらないかな?と思っちゃったんです。全然違う方向の異世界にしてみたいと提案しました。マルタ島のようなイメージで、気候的にも少し乾燥しているという裏設定を作っています。リゼルは青と白、ジルは黒を基調としていますし、異世界の表現としてよくある色味にすると、ゴチャゴチャして、キャラクターが弱く見えるかもしれません。キャラクターを生かそうとして、白を基調とした街並みにしています。お店の看板も少し凝ったデザインにしています。気付きにくいところではあるのですが」

 かつてないほどの異世界アニメブームではあるが、「穏やか貴族の休暇のすすめ。」は差別化しようとした。

 「普通ではないテンポ感ですね。分かりやすいアニメとは真逆なのかもしれません。この作品は、分かりやすい表現ばかりだと、作品のよさが失われます。これだけさまざまな作品がある中で、埋もれてしまうと思ったので、この作品特有のテンポ感をしっかり見せようとしました。テンポを極力速めない。難しいところなので、最初は試行錯誤していました。原作の岬先生からも『アクションシーンは会話の裏側で軽くこなすぐらいのイメージです』と言われています。戦うシーンもあるのですが、ジルは最強なので、戦闘にならない。あっさり終わります」

 情報にあふれている現代だからこそ、独特のテンポは癒やしになるのかもしれない。王道からは外れているかもしれないが、それが同作のカラーになっていくはずだ。

 「声優さんの演技におんぶに抱っこなところもあります。ドラマCDもありますし、信頼しています。ただ、第1話のコンテを書く時は、情報が入りすぎると、引きずられてしまうので、あえて聞かないで一度書こうとしました。第2話から聞きながら書いているのですが。実際に聞くと、リゼルはこういう人なんだと解像度がより上がったところもあります」

 能田監督は「全体的に大変でした」と振り返る。

 「アニメは、2年後くらいに放送される作品を制作しています。その時、流行しているものがあっても、2年後はどうなっているか分からない。この先がどうなるかと自分なりに考えるけど、何が流行しているかは誰にも分かりません。それならば、自分が面白いと思う新しいことをどんどんやっていった方がいい。2年前も派手なアニメが好まれていて、今もやっぱりそうではあるのですが、派手じゃないものもあるべきだと思います」

 能田監督は、流行に流されるわけではなく、アニメで「穏やか貴族の休暇のすすめ。」の魅力を最大限に表現しようとしているようだ。こだわりが詰まった“異彩を放つ異世界アニメ”をじっくり堪能してほしい。(阿仁間満/MANTANWEB)

写真を見る全 54 枚

アニメ 最新記事