第85回米アカデミー賞で、アン・ハサウェイさんの助演女優賞など3部門に輝き、また国内興行収入58億円を記録し、国内ミュージカル映画歴代1位を記録した「レ・ミゼラブル」(トム・フーパー監督)のブルーレイディスク(BD)とDVDが21日にリリースされた。そのPRのために、主要キャストの一人、エディ・レッドメインさんがこのほど来日。作品について振り返った。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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映画「レ・ミゼラブル」は、文豪ヴィクトル・ユゴーが1862年に発表した小説が原作。19世紀のフランスを舞台に、一片のパンを盗んだ罪で19年間投獄され、その後、別人として生まれ変わったジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマンさん)を軸に、彼の“娘”コゼット(アマンダ・セイフライドさん)や、バルジャンの宿敵ジャベール警部(ラッセル・クロウさん)らが、革命の波にのみこまれていく様子がミュージカルとして描かれる。レッドメインさんが演じるのは、革命を志しながらコゼットと恋に落ちる学生マリウスだ。
レッドメインさんは子供のころ、舞台「レ・ミゼラブル」を見て、ストリートチルドレンのガブローシュに憧れたという。「当時、8、9歳の僕にとって、ガブローシュはロックスターに見えたんだ。ああいうふうになりたいと思った。その後も、家族で旅行に出かけたりすると、車の中で(『レ・ミゼラブル』の)CDをかけながら、ヒューやラッセルのパートを兄と歌ったりしていた。まさかそんな作品に自分がこの年(30代)になってマリウス役で出られるようになるとは思ってもいなかったよ」と、当時憧れた人物とは異なるものの、憧れの作品に出られたことを、心から喜ぶ。
今作において、出演者の誰もが口にしていたのは、いわゆる口パクではなく、生で歌ったそのままの映像が映し出されることへの苦労だった。それはレッドメインさんも同じだ。「生で歌うのはやっぱりチャレンジだった。映画では、壮大なオーケストラの曲が聴こえてくるけれど、撮影中は、歌っている本人に聴こえるのはピアノの伴奏だけ。そこで一人、声を張り上げて歌うというのは、なかなか勇気がいるものだよ。だけど、今考えても、あの方法はとてもよかった」とフーパー監督の撮影法をたたえる。
ただ、同じ曲を何度も歌わなければならなかった。「何テークするかわからないんだ。20回も歌わないといけないこともあった。実は最初は、全部ライブといいつつ、あとで声の修正をするんだろうな、ぐらいに思っていた。だけど、トム(・フーパー監督)はそれを許さなかった。中には、僕にとっては完璧ではなくて、なぜその歌(のテーク)を選んだんだ?と首をかしげたこともあったよ。だけどそれは、トムが、その場面にはそちらのほうが完璧だと判断したからだ」と、今ではフーパー監督の完璧主義に敬意を表す。
そのフーパー監督は公開のときのインタビューで、革命を志し蜂起する学生たちがバリケードを作るシーンの撮影が楽しかったと話していた。それについてたずねると「確かに楽しかったよ」とうなずいたあとで、次のように話した。「トムは、とにかくリアルであることを求める監督なんだ。だからあのときも、農民や学生役のエキストラが40人くらいいたんだけど、そこにコスチュームを着せたカメラマンを潜り込ませてね。で、トムが言ったんだ、『バリケードを作れ! アクション!』とね。最初はなんのことだか分からなかったよ。そうしたら次の瞬間、ピアノやらいろんなものが上から降ってきた。10分足らずのことだったけれど、ものすごい光景でとても怖かった。だけど、いい思い出になったよ」と上から降ってくるものをよける身ぶりをしながら当時の様子を語った。
印象深いシーンに、ソロで歌う「カフェ・ソング(Empty Chairs At Empty Tables)」の場面を挙げる。「あのシーンの撮影は、スケジュール的にかなりあとのほうだったんだ。現場に行くと、昨日はヒューがすごい歌を歌ったとか、アン・ハサウェイが『夢やぶれて』を熱唱したとか、そういう声が聞こえてくるから、そりゃあもうどんどん緊張していったよ」といつも以上に強くストレスを感じながらの撮影だったことを明かした。
今回が初来日。このインタビューの前日の夕方に東京に到着し、「明日には帰国するんだ」という強行スケジュール。中日だったこの日も午前中から取材攻めになったため、「おかげで(宿泊先の)ホテルしか見ていない」と笑う。それでも、前夜には居酒屋でさしみを食べ、「おいしかった」と笑顔を見せた。「原宿でショッピングをしたい」と言いつつ、今回はとてもそんな時間を取れそうにないといい、「今度、ぜひ行ってみたい」と目を輝かせていたレッドメインさん。英国紳士らしい気品を漂わせながら、インタビュー中は、終始身ぶり手ぶりを交え、笑顔で質問に答えていた。そこには、いちずにコゼットを愛し、革命に身を投じるまじめな学生とはまた別の好青年ぶりがうかがえた。
<プロフィル>
1982年、英ロンドン生まれ。イートンカレッジで学び、ケンブリッジ大学トリニティカレッジで美術史を専攻する。少年時代から演技のレッスンを始め、2002年、グローブ・シアターの「十二夜」で本格的にプロデビュー。09年の「Red」のロンドン公演でオリヴィエ賞、米ブロードウエー公演でトニー賞を受賞した。一方で05年には、トム・フーパー監督が演出したテレビ映画「エリザベス1世 愛と陰謀の王宮」に出演。06年、「ザ・デンジャラス・マインド」(未公開)で映画デビュー。ほかの映画出演作にロバート・デニーロ監督作「グッド・シェパード」(06年)や、「エリザベス:ゴールデン・エイジ」「美しすぎる母」(ともに07年)、「ブーリン家の姉妹」「イエロー・ハンカチーフ」(ともに08年)、「マリリン 7日間の恋」「HICK ルリ13歳の旅」(ともに11年)がある。
*……「レ・ミゼラブル」6月21日発売:BD(デジタルコピー付き、2枚組み、3800円)▽BDコレクターズボックス(5枚組み、8190円)▽フォトブック仕様BD&DVD(2枚組み、5240円)▽DVD(1枚、2480円)▽同日DVD、BDレンタル開始 発売・販売:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
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