1984年にジェームズ・キャメロン監督が世に送り出してから続く人気シリーズ「ターミネーター」。その5作目にして最新作「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(アラン・テイラー監督)が、10日に公開された。今作で、ヒロインのサラ・コナーを演じているのがエミリア・クラークさんだ。サラ・コナーといえば、1作目の「ターミネーター」、同じキャメロン監督版2作目「ターミネーター2」(91年)でリンダ・ハミルトンさんが演じていた役。キャメロン版を「大好きだったし、サラ・コナーに憧れて育った」と目を輝かせるクラークさんに、今回、「ターミネーター3」(2003年)以来12年ぶりにターミネーター役でカムバックしたアーノルド・シュワルツェネッガーさんについて、また自身の役作りについて聞いた。
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映画は、2029年から1984年にタイムスリップしたカイル・リース(ジェイ・コートニーさん)が、のちに人類抵抗軍のリーダーとなるジョン・コナー(ジェイソン・クラークさん)の母サラ・コナー(クラークさん)と、彼女が“おじさん”と呼ぶ“守護神”(シュワルツェネッガーさん)とともに、恐るべきマシンと戦う姿を描いていく。キャメロン監督版の世界観を踏襲してはいるが、過去が変わったために時間軸が塗り替わり、それに伴い物語も新たなステージに突入。サラ・コナーのキャラクターもキャメロン監督版とは大きく変わっている。
とはいえ、キャメロン版へのリスペクトはしっかりと組み込まれており、例えばサラと2029年から彼女を守るためにやって来たリースとの対面シーンに表れている。そこで彼女が言うせりふは、ファンならニヤリとするはずだ。
「あのシーンは、撮影の中でも一番恐れていた日だったの」と思い返すクラークさん。当日は興奮もし、ナーバスになり、「緊張をほぐすためにいろんな言い方を試して、みんなをわざと笑わせようとふざけてみたりした」という。しかし、「それがあまり受けず、真面目にやってと言われてちゃったの(笑い)」とバツが悪そうに打ち明ける。気を取り直して真面目にやったものの、「せりふだけじゃなくて、アクションもあるし、銃も持っているし、その上、トラックもワーッと入ってくるしで、かなりのテイク数を重ねてしまったわ」と照れ笑いを浮かべる。
このインタビューの前に開かれた記者会見で、アクショントレーニングに関しては無経験で、「サラの資質はゼロだった」と明かしていたクラークさん。撮影には、ウエートリフティングで筋肉をつけ、銃の扱い方を習って臨んだという。作品が完成した今、「アーノルドにいい仕事をしたねと言われることを目標にしていたけれど、それはなんとか達成できたと思う」と満足そうに語った。
そこで改めてシュワルツェネッガーさんとの共演について聞くと、「私は本当に幸運の持ち主だと思う。あれほどの有名人と仕事ができるのだから」と喜びをあらわにする一方で、「子供時代の彼のイメージは、ボディービルダーで映画スターで、とにかくものすごい人」とおそれ多かったようだ。しかし実際に仕事をし、シュワルツェネッガーさんの「人間的な優しさや、有名人らしからぬ謙虚さ」に触れ、「知的で道徳心の強い人物」ということが分かり、「今はとても尊敬している」と話す。そして、「アクションや銃撃戦のシーンも楽しかったけれど、彼と心を通わせる演技の部分が一番楽しかった」と撮影を振り返り、「特に、私(サラ)を守ろうとするところはとてもすてきだった」としみじみ語った。
クラークさんは、サラという人物を、「9歳で悲劇に見舞われ、ターミネーターに救われ、葛藤を抱えながら、その運命を受け入れている」女性と分析する。演じるに当たっては、「これまでも、普通の人間には到底理解できないような役が結構あった」と前置きしてから、「俳優は、公衆の目にさらされているという面はあるけれど、どんな仕事に就いている人も同じような感情を持っていると思う。私の友人に金融業界で働いている人がいるけれど、その人だって、状況は違うけれどプレッシャーもあればチャレンジしなければいけないときもある。メンタリティーの部分では同じだと思う。だから、そういう役のときには、自分が理解でき得る範囲で、運命の対処の仕方や感情を自分の中でなんとか見つけ出そうという作業をする」と自身の役作りを説明する。
しかし、演じることと実際の人生は別。もし自分がサラ・コナーのような状況に陥ったら、「どうしましょう!」と天を仰ぎ見ながら、「たぶん私はおじさんと一緒にハワイに逃げちゃって、ピニャ・コラーダを飲むでしょうね(笑い)」とちゃめっ気たっぷりのコメントで切り抜けた。
クラークさんを一躍有名にしたテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で演じたデナーリス・ターガリエンも、芯の強い女性だ。その点では、サラ・コナーと通じる部分があり、最近よく、「あなた自身、信念を持つ女性か」という質問を受けるという。「そんなこと、以前は考えたことがなかった」そうだが、「その質問に対する答えをいろいろ考えているうちに、私の中に芯の強さがあるのではないかと思い始めているところ」と心の変化を明かす。そして、クラークさん自身が幼い頃から俳優になりたいと「一生懸命思い続け」、それを実現させたことから、「私自身、芯の強い人間に憧れているし、一生懸命さがもしかしたら、そういう役柄を演じるときに出てくるのかもしれないわね」と想像を巡らせる。
今回が初来日。「家族全員が日本にすごく憧れている」といい、クラークさんが日本へ行くと聞いた家族からは、「日本でやるべきこと」を教わってきたという。それにのっとり、このインタビューの前日には京都を訪れ、「お寺を見たり、茶道を体験したり、創業500年の老舗のおそば屋さんにも行ったわ。あと、着物を見て、書も見たわ」と日本文化を満喫したようだ。そして、「今度はカラオケに行きたい!」と笑顔を見せる。日本食もお気に召し、とりわけおすしは大満足だったようで、食べた思い出に浸りながら、「ああ、ウニ!」とうっとりしていた。映画「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は10日から全国で公開。
<プロフィル>
1986年、英ロンドン生まれ。ロンドン芸術学校のドラマ・センター・ロンドン卒。英テレビシリーズ「Doctors」(2009年)でのゲスト出演でキャリアをスタート。米英合作のテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11年~)のデナーリス・ターガリエン役で一躍スターダムにのし上がった。13年には舞台「ティファニーで朝食を」でホリー・ゴライトリーを演じブロードウエーデビューを果たした。
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