一人ぼっちの少年が名門合唱団に入って運命を切り開いていく「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」(フランソワ・ジラール監督)が11日から公開される。名優ダスティン・ホフマンさんが厳しい指導者役で少年を見守る。ヘンデルから日本の童謡まで、さまざまな名曲が映画を歌声で彩っている。
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母子家庭のステット(ギャレット・ウェアリング君)は学校の問題児。心を閉ざし、友達もいない。校長のスティール(デブラ・ウィンガーさん)は彼の歌の才能を見抜き、国立少年合唱団のオーディションを受けるよう勧めるが、ステットは反発する。ほどなく、生まれて初めて会った父親(ジョシュ・ルーカスさん)によって合唱団の寄宿舎へ転校させられる。合唱団のカーベル先生(ホフマンさん)はステットの態度に不満を持ちながらも、厳しく指導をしていく。同級生たちから才能を嫉妬されたステットは、いじめのターゲットとなるが、次第に歌うことに喜びを見いだして……という展開。
心を閉ざした少年の成長と、声変わりまでのほんのつかの間の美しい歌声が重なり、感動もひとしおだ。飲んだくれの母親を支えているけなげな姿が簡潔に語られ、父親にも拒絶されてしまった少年ステットを、序盤から見守る気持ちでいっぱいになる。ステットには美しい声と音楽の才能があったが、カッとなりやすく孤立している。そんな少年の物語の中心に音楽があり、指導者との出会いがある。この映画には、教育者の真価が問われる場面がいくつも出てくる。才能を否定された過去を持つ先生と、問題児のステット。どこまで信じ、どう指導していったらいいのか。孤独な少年に、どこまで厳しさを見せたらいいのか。ステットの成長も行きつ戻りつで、問題が起きるたびに「あ~あ」と思わされ、少年がどう変わっていくのか最後まで目が離せない。加えて、ステットと父親の関係の変化にもグッとくる。アメリカ少年合唱団が歌っているワーグナーやフォーレの少年合唱が、希望の歌として響き渡る。「グレン・グールドをめぐる32章」(1993年)や「レッド・バイオリン」(98年)などのジラール監督の作品。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作のような寮生活ものに弱いです……。
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