注目映画紹介:「わたしの名前は...」 アニエスベーの初監督作 少女とおじさんのロードムービー

映画「わたしの名前は...」のワンシーン (C)Love streams agnès b.Productions
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映画「わたしの名前は...」のワンシーン (C)Love streams agnès b.Productions

 ファッションデザイナーのアニエスベーさんが本名の“アニエス・トゥルブレ”名義で初監督した「わたしの名前は…」が31日から公開される。家出した少女とトラック運転手のロードムービーで、「ジダン/神が愛した男」(2006年)の監督を務めた現代美術家のダグラス・ゴードンさんが運転手役で出演している。

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 12歳の少女(ルー・レリア・デュメールリアックさん)は、家で実父に虐待されていた。父親は仕事がなく、母親はバーで働き詰め。幼い弟や妹もいる。「いつか家を出よう」と思っていた少女は、学校行事で自然教室に行く日を利用して家出を決行。海辺に停まっていた赤いトラックに、大好きな人形とともに乗り込み、運転手のスコットランド人の男(ゴードンさん)と次第に心を通わせていく……という展開。

 クエンティン・タランティーノ監督作「パルプ・フィクション」(1994年)など、数々の映画に衣装を提供してきたアニエスさん。初監督と聞いて期待が高まった人も多いのではないだろうか。衣装やインテリアのセンスがいうまでもなく抜群で、さまざまなカメラを用いて、フレームに変化をつけたりイラストを使ったりしながら、芸術的な表現で見る側を刺激してくる。虐待児童の家出というヘビーな内容なのに、映画の魔法がかかって、少女とおじさんの気ままな逃避行にワクワクさせられる。大西洋沿いの何もない田舎を行く旅路はどこまでも開放的だ。人はときに自分ではない誰かになりたくなるもので、映画はそんな気分を満たしてくれる。赤いトラックが、少女の洋服の赤と重なって、薄暗い自宅から飛び出した少女に活力を与えるかのようだ。新しい世界が開けていく……。さまざななラストを想像した先の思わぬ展開に衝撃が走る。音楽は、フランスのエレクトロポップデュオ「Air(エール)」のジャン・ブノワ・ダンケルさんが参加。米国のバンド「ソニック・ユース」が未発表音源を提供している。米国のアンダーグラウンド映画界を代表するジョナス・メカスさんがゲストカメラマンとして参加し、哲学者アントニオ・ネグリさんが登場するシーンを撮影している。渋谷アップリンク(東京都渋谷区)ほかで31日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。映画「裁かれるは善人のみ」(31日公開)、力強い作品でした。

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