俳優の桐谷健太さんが出演するWOWOWとTBSの共同制作ドラマ「MOZU スピンオフ～大杉探偵事務所～」が8日と15日にWOWOWプライムで放送される。桐谷さんは主演の香川照之さん演じる大杉良太の後輩刑事役で15日放送の「砕かれた過去編」に出演する。桐谷さんにドラマの役への思いや香川さんとの共演エピソードなどを聞いた。
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◇役に没頭し「夜に公園で号泣」したことも
「MOZU スピンオフ～大杉探偵事務所～砕かれた過去編」は、作家・逢坂剛さんのハードボイルド小説が原作で2014年にTBS系とWOWOWで放送された連続ドラマ「MOZU」のスピンオフ作品。香川さんが演じる元捜査1課の敏腕刑事で私立探偵となった大杉良太が主人公で、伊藤淳史さんが演じる警視庁一の情報通・鳴宮啓介とコンビで美女にまつわる難事件に挑む姿を描いている。桐谷さんは妻子を殺され、憤りを抱えながらも捜査に奔走する警視庁刑事部の三島彰文役を演じる。
もともと「MOZU」は全作品見ており「カッコいい作品だと思った」という桐谷さん。「MOZU」に参加するにあたっては「この役をとにかく最後まで全うするだけだったので、プレッシャーはなかった」と明かす。もっとも、普段からプレッシャーを感じるタイプではない。「緊張するということは自分の中で入り込みきれてないのかなと思う」と考えており、役に集中すれば緊張とは無縁という。ただ、今作で演じるのは妻子を殺された刑事という重い役。緊張ではないが、台本を読んだときは「これを今からやっていくのか」という強烈な印象を持ったという。
役作りについて、桐谷さんは「自分をそっち（役）に持っていって……。役にどっぷり浸かって。クランクインから1カ月ぐらい、最初から最後まで（現場に）いたので、ずっとこの役に入り込んでやったらやばいな、と思った」と振り返る。「だから前日と当日に、ぐわーっと（自分を役に）持っていって、（撮影の）インパクトの瞬間、カットの瞬間に出す、ということをしました。ずっと持っていたら途中でバテたり、私生活にも影響したりするので……。切り替えが大事だと思う。私生活で周りの人を傷つけてしまうことが昔あったので、それはよくないなと思って……」と明かす。
それでも、役に没頭するゆえの苦しさはあった。「芝居の後半、撮影に入るテストの前に戻して（吐いて）しまったりとかもありました。ほんまやばいなと、それぐらい入っている自分にも気づいた。プライベートにもそういう香りは残っていた。悲しいというか、楽しいという気分にはあまりなれない」と桐谷さん。気分転換のつもりで散歩をすることもあったが、役を忘れきれていない部分は常に残っていたという。「この悲しい境遇、悲しい運命をとにかく自分の中で、でかくしていって。夜に公園で一人で役作りしていて、号泣しながら歩いてましたね（笑い）。止まらなかった」と役作りの裏側を明かす。
◇日常の変化が役に影響 「新しい風が吹いている」
今作では、香川さんが演じる大杉良太の後輩刑事役を演じる桐谷さん。香川さんとの共演はどのようなものだったのか。今回改めて感じたのは、その器の大きさだという。「（香川さんは）『芝居がうまいことも大事だけど、やっぱり人間性だよ』ということを初日から言っていて……この人はそれを本当に実行しているなと思った。器がどんどん変わるというか、大きくもあるし、変化できる人。笑かす方にも行けるし、静かに見守っている感じもある。親心があると感じた」と桐谷さん。「人間性が大事という部分を、ちゃんと自分の中でつかみ取っている人なんだなと思った」と語る。
これまで、勢いのある役、明るい兄貴肌の役が多かった印象がある桐谷さんだが、今作や9月に公開された映画「GONINサーガ」（石井隆監督）など一味違う、一回り大人の雰囲気の役も増えてきた。自身でもこうした幅の広がりは感じており、「新しい風が吹いている感覚がある」という。「もちろん、元気で笑いをとったり、明るくてハイテンションで、みたいな役も多いんですけど、最近はゆっくりといろいろと変わってきている」と感じている。
プライベートでは昨年、結婚し父親になった桐谷さんだが、そうした日常における変化が与える影響は、決して小さくないのだろう。「日常が変わる時点で、やっぱりそれは大きく影響しますよね。自分で気づいてないぐらい。きっと、すごく大きいと思います」と語る。今後、さらなる飛躍が期待できそうだが、「日常が変わったり、年を重ねていくことで（自分も）変わっていってるんだろうなと思うので、そこは流れに任せて」と自然体で語った。
「MOZU スピンオフ～大杉探偵事務所～砕かれた過去編」は11月15日午後10時からWOWOWプライムで放送される。
＜プロフィル＞
1980年生まれ、大阪府出身。映画は「ゲロッパ！」（2003年、井筒和幸監督）や「アウトレイジ ビヨンド」（12年、北野武監督）、「GONINサーガ」（15年、石井隆監督）、テレビドラマは「龍馬伝」（10年）、「JIN－仁－」（11年）など出演多数。
