グスタフ・クリムトが描いた世界的な名画「黄金のアデーレ」を巡る実話を基にした映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」(サイモン・カーティス監督)が27日に公開される。米国で暮らす女性が、“オーストリアのモナリザ”と称される名画「黄金のアデーレ」の返還を求めてオーストリア政府を訴えた裁判と、名画がたどった数奇な運命を描いている作品。主人公で実在した女性マリア・アルトマンを「クィーン」(2006年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンさんが演じ、ライアン・レイノルズさん、ダニエル・ブリュールさんらが脇を固める。
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米ロサンゼルスで暮らすマリア・アルトマン(ミレンさん)は、亡くなった姉がオーストリア政府にナチスに没収された伯母アデーレがモデルとなった肖像画「黄金のアデーレ」の返還を求めようとしていたことを知る。姉の遺志を継いだマリアは、弁護士のランディ・シェーンベルク(レイノルズさん)に手続きを依頼するが、ウィーンで開かれた審問会で返還を拒否されてしまう。そこでマリアはランディとともにオーストリア政府に対して、絵画返還を求めて裁判を起こし……というストーリー。
名画を巡る物語は、かくも数奇なものなのかと不思議と納得させられてしまう今作は、現在は米ニューヨークのノイエ・ガレリエに所蔵されている肖像画をめぐる実話がベースとなっている。戦争をきっかけに奪われてしまった絵画を取り戻そうとする家族の奮闘ぶりは、絵を取り戻すことに加えて、そこに失ってしまった幸せな時代を象徴するものとしての意味合いも込められ、痛みや悲しみ、切なさといった感情が画面からにじみ出ている。国を相手に絵を巡って裁判で争うというのは、当時としてはかなりセンセーショナルな出来事だったのだろうし、法廷闘争を通じて歴史の裏側で何があったかを見せてくれる。ミレンさんとレイノルズさんという主要キャストの演技は抜群の安定感で、物語に彩りと深みを与えている。年齢が大きく離れた2人が同じ目的に向かって突き進んでいく姿が痛快だ。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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