スティーブン・スピルバーグ監督が、実在の米国人弁護士の活躍を描いた映画「ブリッジ・オブ・スパイ」が、8日から公開される。弁護士を演じるのは、スピルバーグ監督とは「プライベート・ライアン」(1998年)以降3本の映画でコンビを組んでいるトム・ハンクスさん。それだけでも注目を集めるが、さらに関心を高めさせるのが、劇作家のマット・チャーマンさんとともに、ジョエル&イーサンのコーエン兄弟が脚本を担当しているということ。なるほど、コーエン兄弟らしいサスペンスと、スピルバーグ監督らしいヒューマニティーが絶妙にブレンドされた見応えある作品に仕上がっている。
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舞台は、米国とソ連が冷戦状態にあった1950、60年代。ジェームズ・ドノバン(ハンクスさん)は、保険法を専門とする米国人弁護士だったが、「誰しも等しく公平な裁判を受ける権利がある」という信念のもと、ソ連のスパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランスさん)の弁護を引き受ける。それをきっかけにドノバンは、ソ連に拘束された米国人パイロット(オースティン・ストウェルさん)とアベルの交換交渉を任されることに。交渉の場は、ソ連の占領下の東ベルリン。ドノバンは命懸けで交渉場所へと向かう……という展開。
タイトルからスパイ映画を想像していたが、実のところはスパイを助けるために尽力した実在の弁護士の話で、米国やソ連、さらに東ドイツの政府要人の思惑が入り乱れる中、公平、正義を信条に交渉を繰り広げるドノバンの姿が熱く描かれていた。ときおりユーモラスな場面もはさみ込み、一見、取っ付きにくそうなストーリーを、スピルバーグ監督がエンターテインメント寄りに描いた。ハンクスさんの、信義に厚い弁護士像も好感が持て、夫として父親としての素顔を見せることも怠らない。一方、ソ連のスパイ、アベルを演じたライランスさんも、スパイにはおよそ見えないスパイをひょうひょうとした雰囲気で演じ、しかし時折、祖国に見放された男の寂しさを垣間見せ、共感を誘うことに成功している。その2人の間に芽生える友情も今作のポイントだ。アベルがドノバンに語る幼少期の体験は、のちの感動を深める伏線となり、終盤のアベルとドノバンのやりとりには涙腺を刺激された。ドノバンこそが“懸け橋”だと悟ったとき、タイトルの「ブリッジ・オブ・スパイ(Bridge of Spies)」が、がぜん輝いて見えた。8日からTOHOシネマズ スカラ座(東京都千代田区)ほかで公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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