ブッシュ米大統領の再選を目前に、米国CBSニュースのスクープ番組の裏側で起きた実話を基にした「ニュースの真相」(ジェームズ・バンダービルト監督)が5日から公開される。ケイト・ブランシェットさんとロバート・レッドフォードさんという2人のオスカー俳優が実在の人物に扮(ふん)し、真実を求めて闘う報道人を渾身(こんしん)の演技で見せている。
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2004年。メアリー・メイプス(ブランシェットさん)は、20年のキャリアを持つCBSニュースのプロデューサー。番組「60ミニッツ!!」でアンカーを務めるジャーナリストのダン・ラザー(レッドフォードさん)とは、父と娘のような信頼関係で結ばれている。大統領選の年に新たなテーマに向かって取材を始めたメアリーは、現職のジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑に迫るために取材チームを結成し、裏付け調査を行う。スクープを放送し、一度はセンセーションを巻き起こしたが、保守派のブロガーに証拠の文書偽造を疑われたことをきっかけに、批判の矢面に立たされ……という展開。
冒頭、メアリーの功績として、イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待事件のスクープが伝えられ、敏腕プロデューサーとしての姿が印象づけられる。彼女の報道人としての闘いを軸に、権力に立ち向かうリスクや勇気が語られていく。前半と後半で、メアリーの立場がガラリと変わる。その過程が彼女の仕事ぶりとともに緊張感を持って刻々と描かれ、スクリーンに釘づけになる。ブランシェットさんの演技が秀逸だ。政権を揺るがすスクープに向かって突進していくときの意気揚々とした姿。証拠を偽証だといわれて、すべてが翻っていき窮地に立たされたあとの、人間的な弱さにも注目だ。それでも決して信念に屈しない女性の美しい姿に見ほれてしまう。
プロが真実をつかんだという確証も、無名のブロガーによって隙を突かれてしまう。さらに、出来レースである内部調査、旧来型のメディアの役割の崩壊といった今日的な問題をまざまざと見せつけられる。メアリーいわく「人間性まで疑われて、異常な騒ぎとなる」というような……。まったく息苦しい社会だ。だからこそメアリーをそっと支えるダンや夫の存在が温かい。ジャーナリストは何のために闘っているのか。虐待、病苦、自然災害などと闘っている人々が世界中にいるからだ。最後のダンのせりふが闘うすべての人々に響くだろう。5日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ダンのせりふにいちいちウルウルしました。
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