三谷幸喜:「真田丸」最終回へ思い 敗者・幸村の人生を描くのは「ハードルが高かった」

三谷幸喜さんが脚本を手がけた「真田丸」の最終回の一場面=NHK提供
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三谷幸喜さんが脚本を手がけた「真田丸」の最終回の一場面=NHK提供

 三谷幸喜さんが脚本を手がけたNHK大河ドラマ「真田丸」が18日、最終回を迎える。三谷さんは偉大な父を持つ2代目で、敗者である真田信繁(幸村)の人生を描いたことを「ハードルが高かった」と明かす。約2年におよんだという執筆期間を経て、最終回を前にした三谷さんにドラマを振り返ってもらった。

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 ◇第1回の噴火シーンで手応え感じる

 「真田丸」は、戦国時代に信州の小さな領主のもとに生まれた真田幸村(堺雅人さん)が、家族とともに知恵と勇気と努力で乱世を生き抜く姿を描いている。三谷さんは、2004年放送の「新選組!」以来、12年ぶりに大河ドラマの脚本を手がけた。

 三谷さんは最終回を前に「最終回が放送されないと、終わった気がしない」と話しつつ、「2年かけて書き、ほかの大河に比べるとユーモアの要素も多いが、どうやって視聴者を引っ張っていき、ワクワクする気持ちを持続させられるか、どんなテクニックがあるかを勉強させていただいた。自分のことを基本は喜劇作家だと思っていますが、笑い以外に物語る面白さを突き詰めるきっかけになった。12年前に『新選組!』が終わった時も同じようなことを言っていたので、変わらないと思いますが」と振り返る。

 また「新選組!」との違いを「『真田丸』の方が物語性が強い。『新選組!』は近藤勇と仲間たちの視線で追っていた。今回は信繁目線ではありますが、30年以上の物語。信繁は最後まで何もしていない人。ハードルが高かったと思う。物語をどう紡ぐかを研究して、中だるみのない作品にするために勉強させていただいた」と語る。

 「真田丸」は熱心なファンを生んだドラマだ。三谷さんが手応えを感じた瞬間を「気のせいかもしれませんが、第1回の放送で浅間山が噴火したシーンの瞬間、窓の外からドッと笑い声が起こった気がした。今、日本中の人が笑っていると感じる瞬間があった。そこからブレずにいけた」と明かす。

 ◇一番成長したのはおこうと本多正信

 三谷さんは「真田丸」で、俳優、女優のキャラクター性を役柄に当てはめる“当て書き”をしたといわれている。三谷さんは脚本を書き、ドラマを見る中で「一番成長したのは、おこうさん(長野里美さん)と本多正信(近藤正臣さん)」と感じたという。「おこうさんは病弱で、稲(吉田羊さん)と信之(大泉洋さん)が結婚した時にフェードアウトしようと思ったけど。キャラとして成長していたことに気付いて、元気になる長野さんが見たいと思いついた。第1回の時は考えていなかった」と明かす。

 本多正信については「元々近藤さんが大好きで、正信は大好きな武将。近藤さんが演じられることで深みが出た。近藤さんのせりふを書くのが楽しくて仕方がなかった。イメージがどんどんふくらんだ。『真田丸』は本多正信で終わるのでは?とすら感じた。正信は悪いイメージもあるが、地元でどう思われていたのか調べたところ、領民のことを考え、領主の見本みたいな人だった。近藤さんが正信を演じたから見えてきたことです。うれしかった」と思いを語る。

 また、「真田丸」は偉大な父を持つ2代目、敗者にスポットを当てたドラマでもあった。三谷さんは「大学のころに舞台『アマデウス』を見て、サリエリという作曲家が大好きになった。神から選ばれなかったけど、守護神というところが心に残っている。信繁は勝者ではなく、敗れていった人の代表。2代目であがいていた人の代表にも思えた。そういうところを前面に押し出し、ただのヒーローではなく、勝てなかった人の守り神になれるといいと思った。石田三成もそうだし、僕が好きだったのは敗れた人。そこにシンパシーを感じる。途中で三成が主役のようになったり、豊臣秀次をフィーチャーするプランは最初からあった」と明かす。

 ◇今度、大河ができればペンネームで

 「真田丸」は、熱心なファンがツイッターなどSNSで盛り上がりを見せたことも話題になった。「意見にはいいのも悪いのもある。劇団のころからアンケートを読み、99枚にいいことが書いてあっても、1枚悪いことが書いてあると、そればかりが気になっていた。落ち込みやすいので、否定的な意見は見ないようにしている」と話しつつも、“丸絵”と呼ばれるファンがツイッターなどにアップしていたイラストは見ていたようで「“丸絵”がすごかった。中には似ていて、上手で、(描いたシーンの)チョイスもいいものもあって、毎回楽しみにしていました。SNS、(物語の舞台の)地方の方などの応援を、ずっと感じながら脚本を書いていました」と喜んでいる様子だ。

 最後に「今後、大河のオファーがあったら?」と質問してみると「大河が大好きで、大河で育った。恩返しがまだまだ足りていない。機会があればやってみたい。申し訳ないなと思うのが、僕が書くことで見ない人もいること。自分のキャラは大先生みたいなイメージではないですし、軽薄と思っている人もいる。『真田丸』は人間ドラマを描けた自信もありますが、僕の名前でドラマを見ない人もいる状況が申し訳ない。また、大河ドラマができるなら、ペンネームでやりたいですね。全く無名の人が出てきたら、僕だと思っていただければ」と話していた。

 「真田丸」の最終回はNHK総合で18日午後8時ほかで放送。

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