29日に最終回を迎える長寿ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」第10シリーズ(TBS系)の脚本を手がける橋田壽賀子さんがこのほど、第1シリーズから数えて通算500回(単発番組を含む)の脚本を書き上げ、同局で石井ふく子プロデューサーとともに東京都内で会見を行った。ドラマ開始当初は1年間ぐらいのつもりで「間を持たせるために家族を多くしようと思った」という橋田さんは、「(10シリーズを)書いたことについては『年取ったな』という思いだけ。終わったときは、地獄から解放されたと思いました。今は極楽です」と20年にわたる苦労を語り、「(お祝いのため)生まれて初めてビールをコップ1杯全部飲みました。酔いませんでした。あんな開放感でお酒が飲めるなんて。これからは飲んべえになろうかな」とすがすがしい笑顔を見せていた。
ウナギノボリ
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90年秋にスタートした「渡る世間は鬼ばかり」は、食事処「おかくら」を経営する岡倉大吉(宇津井健さん)と5人の娘の物語。泉ピン子さん、長山藍子さん、中田喜子さん、野村真美さん、藤田朋子さんの5人姉妹とえなりかずきさんらおなじみのキャストが20年間演じ続け、幅広い世代から支持を得た。物語は娘たちの結婚、家庭問題など暮らしぶりを追いながら、それぞれの世代が抱える問題や悩みを描き、家族を問いかけてきた。シリーズ途中で、岡倉夫妻役の藤岡琢也さんと山岡久乃さんが死去し、大吉役は宇津井さんが引き継いだ。第9シリーズまでの視聴率は平均21.3%という驚異的な記録を残している。現在は10作目となる最終シリーズを放送中。
脚本を書き続けたことについて橋田さんは「年中完全に書こうとしない。(完璧を10とすると)あるときは5でいいや、行き詰まったら5で、8で、最後が10になればいいやと思って続けるんです。いつも完全なのはダメ」と長続きの秘訣(ひけつ)を明かし、「生き上手みたいなところはあった。二流で結構。そういう人生が一番いいなと思った」と長かった執筆期間を振り返った。
橋田さんについて、長年パートナーを組んできた石井プロデューサーは「最終稿を受け取ったときは泣いたことがあまりなかったのに、感無量で涙が出ました」と明かした。橋田さんは「私は全然平気だったのに、この人(石井プロデューサー)が泣くからもらい泣きしました。大変だったのは私なのに、『あなたが泣くの?』って思いました」と話しつつ、「泣いていただいてすごくうれしかった」と親しみを込めて語った。
えなりさんが演じる小島眞(しん)に母親のような気持ちを持っていたという橋田さんは最終回で眞を「結婚させます。ハッピーエンドの橋田です」と宣言した。「(眞を)絶対結婚させないで終わるってふく子さんに言ったけれど、誰かと結婚しなきゃまずいと言われた。本当はもっと違う人と結婚させたかった……」と報道陣を笑わせたが、「眞を結婚させちゃうとドラマが本当に終わる気がする。だから結婚させたくなかったんだと思います」と、秘めた思いを明かした。
ドラマについて、橋田さんは「そのときに思ったことを、このドラマなら書ける。ライターにとってはものすごくいい形だった。『こいつもう嫌だから消そう』とかできる」とブラックジョークを交えながらも愛着を込めて、「これからもあの家族と付き合っていきたい。書かせてくださいとは言いませんけれど、書けと言われれば書きますよ」と続編への含みも持たせた。今後の活動については「もう86歳だから引退です」と宣言しつつも、「気が向いたら。100歳まで脚本家をやって、記録を作るのもいいかもしれない」と意欲を見せていた。ドラマは毎週木曜午後9時に放送中。最終回は29日午後9時~10時48分の2時間スペシャルとなる。(毎日新聞デジタル)
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