人気作家・西尾維新さんの小説が原作で、テレビアニメも放送中の「偽物語」が人気だ。「物語」シリーズの第1弾「化物語」が09年にテレビアニメが放送されて人気に火が付き、小説は、オリコン週間販売ランキング1位を取り続けている。ファンの心をとりこにする物語の魅力を探った。(毎日新聞デジタル)
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「物語」シリーズは、西尾さんが06年から執筆している小説で、正義感の強い高校生・阿良々木暦(あららぎこよみ)と、怪奇にかかわった少女たちの姿を描いている。第1弾「化物語」は、カニやヘビなどの怪異にとりつかれた5人の少女の話で、DVDとブルーレイ・ディスク(BD)は累計60万枚以上を出荷する人気作だ。
「化物語」の続編となる「偽物語」は、暦の妹で運動神経が抜群の火憐(かれん)と、頭が切れる月火(つきひ)の中学生コンビを中心にした話で、「化物語」のヒロインも髪形や性格を変えて登場する。前半の「かれんビー」(7話分)では、中学生に流行しているうわさと怪奇の事件を描き、後半の「つきひフェニックス」(4話分)では、暦が謎の陰陽師と知り合ったことから問題が表面化する……という展開で怪異の物語が描かれる。
アニメは、独特な個性を放つ原作小説と、凝った演出方法の融合が特徴だ。小説は、密度の濃い会話が次々と展開され、設定や会話には、漢字や言葉の意味などが考え抜かれて選ばれており、当の西尾さんが「小説に特化した通好みの小説」と言い切るほど。それだけにアニメの題材に選ばれたことに驚いたという。
制作したのは、昨年最もアニメファンを熱狂させた「魔法少女まどか☆マギカ」を手掛けたスタジオ「シャフト」(東京都杉並区)と新房昭之監督の“コンビ”だ。キャラのデフォルメ映像や、文字だけの異質なカットなどを駆使して強弱を付け、さらに一瞬だけ映るカットにも妥協せず、ギミックを詰め込み、従来の枠に縛られない多様な表現方法を次々と生み出している。
作品とスタジオを結びつけたのは、ソニーグループのアニメ企画制作会社「アニプレックス」の岩上敦宏プロデューサーだ。03年ごろに西尾さんの小説「戯言(ざれごと)」シリーズに目を付けた岩上さんは、発行元の講談社の担当編集者と話をして、アニメ化の可能性を探った。その流れで07年、西尾作品のアニメ化第1弾として「化物語」の制作が始まった。岩上さんは「怪異にまつわるストーリーと、会話をはじめとするキャラクター性が魅力だった」と話している。
アニメ事情に詳しい評論家の多根清史さんは「ヒットの理由は三つある。一つ目は、従来の発想にない表現手法。二つ目は、小説の長いセリフを生かす一方で、原作で触れない背景などは自由な発想で視覚化したこと。三つ目は、内面を含めた原作キャラの魅力とデザインの相乗効果だ」と分析している。4月に発売予定のBD1巻は、インターネット販売大手「アマゾン」のアニメランキングで早くも1位となるなど、前評判も上々だ。
岩上さんに、ヒット作を手掛けるコツについて尋ねると「正直、分かりません」と苦笑いしながら、「ロジック(論理)もあるが、面白い物を作ろうという感覚を大事にしている」と明かした。
小説は最新作「恋物語」など多くの作品が刊行済みで、映像化の期待も大きい。岩上さんは「タイトルごとに個性があるので、できればずっとやっていきたい」と話している。
アニメ「偽物語」と並行して、今年は劇場版アニメ「傷物語」の公開も予定されている。「物語」が、ファンの心をどこまでとりこにし続けるか楽しみだ。
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