テレビ質問状:ノンフィクションW「偉大なる指揮者の栄光と苦悩 ナチスとフルトヴェングラー」

「偉大なる指揮者の栄光と苦悩 ナチスとフルトヴェングラー」に登場するフルトベングラー 写真:Interfoto/アフロ
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「偉大なる指揮者の栄光と苦悩 ナチスとフルトヴェングラー」に登場するフルトベングラー 写真:Interfoto/アフロ

 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。8月9日に放送される「偉大なる指揮者の栄光と苦悩 ナチスとフルトヴェングラー」を担当したWOWOWの制作部の横山日登美プロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−番組の概要と魅力は?

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を世界有数の楽団へと育て上げ、20世紀最高の指揮者と称されるビルヘルム・フルトベングラー。称賛を受ける一方で、アドルフ・ヒトラー率いるナチスへの関与を疑われ、戦後その立場は一変しました。

 番組では、戦後60年間見つかることのなかった議事録を日本で初めて公開し、さらに当時を知る人々へのインタビューを通じて、天才指揮者とナチスの関係、そして一人の芸術家としての思いに迫ります。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 まもなく終戦から68年がたとうとしています。ヒトラーによる独裁政権下の悲しみを背負うドイツで、今なお続く論争の一つが「フルトべングラーはナチスに協力していたのか」です。芸術と政治の狭間に揺れた芸術家の思いを描くことで、戦争が文化に与えた影響を見つめ直すきっかけになればと思います。

 −−制作中、一番に心掛けたことは?

 ドイツの一般の方への取材では、フルトべングラーの音楽性を評価する声が多い一方で、ナチスとの歴史から嫌悪する方も存在していました。ディレクターも私も管弦楽演奏の経験があり、彼が指揮する音楽の魅力や音楽界に与えた功績を知っているがために、ともすれば肩入れしたくもなるのですが、事実に基づき公平な立場で描くよう努めています。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 戦争を経験した方が少なくなる中、ベルリン・フィルでフルトベングラーのタクト(指揮棒)に合わせて演奏をしていた当時の楽団員や、日本のメディアとして初めてフルトベングラーの実の娘へのインタビューを撮ることができたのは幸運なことでした。戦後68年がたった今だからこそ話せる、胸の内に秘めていた思いをうかがうことができました。

 −−番組の見どころを教えてください。

 今回が日本初公開となる審議会の議事録です。1947年の連合国による非ナチ化裁判の前に行われていたこの審議会では、これまで明らかにされていなかったフルトベングラーの芸術家としての生命を懸けた証言が残されています。

 また、フルトベングラーが指揮する数々の名演奏を映像で見られるのも、実は貴重な機会かと思います。楽譜にとらわれない、大胆な指揮だけでも一見の価値があります。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 「芸術と政治」という難しいテーマを扱ってはいますが、純粋に音楽を愛した天才指揮者が抱いていた、真実の思いに迫る番組です。8月という節目の月に、戦争を振り返ることと併せて、音楽が当然のように日常生活に寄り添っていることへの喜びを感じていただけたなら幸いです。

 WOWOW 制作部 プロデューサー  横山日登美

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