里中満智子:NHK渡邊あゆみアナと「天上の虹」対談 「あの時代、女性は虐げられていなかった」

NHK「歴史秘話ヒストリア」で扱うマンガ「天上の虹」の作者の里中満智子さん(右)と番組司会の渡邊あゆみアナウンサー
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NHK「歴史秘話ヒストリア」で扱うマンガ「天上の虹」の作者の里中満智子さん(右)と番組司会の渡邊あゆみアナウンサー

 マンガ家、里中満智子さんの持統天皇を主人公にしたマンガ「天上の虹」がNHK総合の歴史番組「歴史秘話ヒストリア」(毎週水曜午後10時)とコラボ。持統天皇をフィーチャーした回「歴史秘話ヒストリア 古代日本 愛のチカラ~よみがえる持統天皇の都」が10日に放送される。32年かけて「天上の虹」を完成させた里中さんと番組の案内役を務める渡邊あゆみアナウンサーに、女帝・持統天皇が生きた時代についてや番組の見どころなどを聞いた。

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 ◇マンガを使って持統天皇の時代を解説

 「天上の虹」は、日本の第四十一代天皇で女帝である持統天皇が大宝律令の制定や、日本書紀の編さんなどにかかわった様子を描いた里中さんの歴史ロマンマンガ。1983年に「mimi DX」で連載が始まったあと、「mimi Excellent」に移り、その後は描き下ろしコミックスで作品を発表し、今年3月に23巻で完結した。番組では、持統天皇が夫・天武天皇との愛と闘いの日々の中で、首都、道路網など革新的な国づくりを行い、日本の危機を乗り越えた様子を、最新の研究成果も交えて紹介。マンガのコマと吹き出しを映した映像を交えながら解説し、持統天皇の声は人気声優の水樹奈々さんが、また声優の吉野裕行さんも声で出演している。

 ◇万葉集がきっかけで持統天皇を主人公に

 里中さんは連載を書き終えたときの心境を、「ホッとしました。連載は長い年月かかりますから途中で病気したりとかいろんなことがあるんですよ。一つの作品を中途半端にしてあの世に行ってもいけないので、ちゃんとラストシーンを描けてホッとしました」と描き終えたときはスタッフと「万歳をした」と振り返る。

 渡邊アナは全23巻を1週間で一気に読んだといい、「朝も夜も家に帰ったら読むという感じで、最後の方に来たら、もう終わっちゃうんだと、(名残惜しくて)明日に取っておきたくなりました」と思い入れたっぷりに語る。

 里中さんは、持統天皇を扱うことにしたきっかけを「万葉集です」と語り、「万葉集で持統天皇は冷静で非常に構成力のしっかりした歌を詠んでいる。世間(の史料など)では我が子可愛さにみんなを殺してしまうような悪い女帝のように書かれていますけれど、それほど感情的な方ではないだろうと。ただ、夫の天武天皇が亡くなったときに詠んだ歌は、ものすごく切に夫を思う歌なんですよ。だから、こういう深い感情も持ってらっしゃるんだなと思いました」と世間の評判とのギャップを感じ、「誰もしないだろうから私が」と主人公に据えた。

 ◇男女が対等だった時代

 「持統天皇は現代のキャリアウーマンの先がけのような人ですが……」と振ると、里中さんから意外な答えが返ってきた。

 「あの時代の女性は虐げられていなかったんですね。どうしてもそのあとの武家社会の仕組みでそう思われがちなんですよ。でも武家社会が確立するまで、いや武家社会の時代でも結構女性は強かったんです。あの時代は女性が私有財産を持ち、職業を持っていることは確立されていて、男性と対等に、身分の差なんて関係なく恋の歌を取り交わしている。私も目からうろこが落ちる思いで。そのことをなんとか伝えたいなというのがありました」といい、「まだあの時代に追いついていないと思ったりしますね」と男女、夫婦の理想の形が持統天皇の時代にあったと持論を語る。

 渡邊アナは「『天上の虹』を読んでいると親子関係も学べます。持統が息子の草壁皇子に強くなってほしい、ほかの立派な皇子たちのようにあってほしいのにと考える。親ってこういうふうに子供にプレッシャーを与えているのか、というのも学べます」と自身の親子関係に思いをはせた。

 また、持統天皇が皇后時代、天武天皇(大海人皇子)の夫人を集めて話をする場面で、渡邊アナは「同じ男の人を愛する女性の集まりですが、(立場や性格で)いろんな愛し方がある、歴史上のこともあるんですけれども人間関係を学びました。いい年してなんですけど、面白かったです」と感想を語った。

 ◇1300年前が身近に感じられる番組

 その「天上の虹」を題材にした番組について、渡邊アナは「持統を軸にして645年の大化の改新、702年大宝律令とかそうやって覚えていたものが、すっとつながって、あの時代に日本の仕組みができたということ、そのキーマンが女性だった、そこに驚きとワクワク感と(その時代の)全体が見えてくる。そんなことに期待していただきたいと思います。また見たあとに現地に足を運んで奈良の風を感じてほしいと思います」とメッセージを送った。

 里中さんは「気が付いたら完全に視聴者になっていて、とにかく楽しく見ることができました。今回は再現のところで(私の)絵がいっぱい使われているので、普段(の番組)とちょっと違うんですけど、本当に楽しんで見ていただければ、1300年前のことが身近に感じられると思います」とアピールし、「もっと番組でも古い時代を扱っていただければうれしいなと思っております」と締めくくった。

 番組は10日午後10時からNHK総合で放送。

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