テレビ質問状:「吠える!映画監督・浜野佐知~私がピンクを撮る理由~」女性監督の生きざま

40年怒りながら400本もの映画を撮ってきた浜野佐知監督
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40年怒りながら400本もの映画を撮ってきた浜野佐知監督

 WOWOWは毎週土曜午後1時に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。7月18日に放送される「ノンフィクションW 吠える!映画監督・浜野佐知~私がピンクを撮る理由~」のチーフプロデューサーを務めたWOWOWの制作局制作部の内野敦史さんに、番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 --番組の概要と魅力は?

 女性監督の活躍が目覚ましい日本の映画界で、その道標を築いたといっても過言ではない浜野佐知監督の魅力に迫ります。40年以上に渡り400本もの作品を生み出してきたその原動力はどこにあるのか? 監督がこだわり続ける“ピンク映画”の世界を通して、一人の映画人の生きざまを描き出します。

 --今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 制作会社の友人であるプロデューサーから提案いただいた当初は、かなり“ピンク寄り”の企画でした。しかし彼と議論を深め、リサーチを進め、浜野監督ご本人にお会いしてみると、一つの重要なテーマが浮き彫りになりました。それは“女性の社会進出の難しさ”であり、監督の中に“女性として生き続ける道=ピンク映画”が哲学として存在している、ということでした。この番組は、単に日本の映画史において重要な役割を担っているピンク映画を懐古的に取り上げるものではありません。不器用なまでに、がむしゃらに映画を生み続ける浜野監督自身の物語に迫ることへ、視聴者の皆さんがカタルシスを感じられる作品にしようと、この企画を立ち上げたのです。

 --制作中、一番に心掛けたことは?

 つむぎ出される作品自体の魅力はもちろんですが、実際に取材を進めていくと、浜野監督ご自身の魅力にぐいぐいと引込まれていきました。撮影中だろうが、打ち上げ後の路上だろうが、どこでカメラを向けても、“口角泡を飛ばさんばかりに”次々と含蓄のあるお言葉をいただきました。想像以上にたくさん得ることができたその言葉の数々を、新作映画の撮影現場の映像を大切にしつつも、できるだけ多く、丁寧に、限られた放送分数の中に織り込むことを心掛けました。

 --番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 中学生の頃、ドキドキしながら見た、その妖艶な大人の世界……それを生み出す製作者の強い思いに直接触れることができたことが、まず個人的に素晴らしい体験でした。と、同時に、浜野監督個人のヒストリーを詳らかにさせていただくこと、それは日本社会におけるジェンダー論に踏み込むということなのだということへ、メディアに携わる人間として、身が引き締まる思いで制作に取り組みました。

 --番組の見どころを教えてください。

 少しだけネタバレをしますと、浜野監督の生きる原動力=映画を作る原動力は、まさに“怒り”にあります。それは監督が過ごした少女時代に感じていた1960年代の日本社会に蔓延する空気そのものに対するものであり、ゴダールに憧れて入門した映画界における“女性としての生きにくさ”に対するものでした。“ピンク映画”という形で、スクリーンを通して40年怒り続けている監督の“生き方そのもの”が番組で浮き彫りにされます。

 --視聴者へ一言お願いします。

 とはいえ、新作撮影現場で怒っている浜野監督のお顔は、普段と同じくらいに、結構キュートだったりします。(監督お許しください……汗)。女性映画監督の第一人者が67歳を超えた今も、人生という名の孤独な闘いに挑み続けるその姿=生きざまに、私はむしろすがすがしさすら覚えました。視聴者の皆さんにも、ぜひこの感覚を味わっていただきたいと思います!

 WOWOW 制作局制作部 チーフプロデューサー 内野敦史

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