Kalafina:「アルスラーン戦記」ED曲は「熱風を感じる曲」 3人の夏の思い出も

「Kalafina」の(左から)Wakanaさん、Keikoさん、Hikaruさん
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「Kalafina」の(左から)Wakanaさん、Keikoさん、Hikaruさん

 女性3人組ユニット「Kalafina」が歌うテレビアニメ「アルスラーン戦記 風塵乱舞」エンディングテーマ「blaze」が10日にリリースされ話題を呼んでいる。「ずっと踏ん張り続ける曲」と評するこの曲には、どんな気持ちが込められているのだろうか。またカップリング曲の「夏の朝」にちなんで、3人の夏の思い出についても聞いた。

ウナギノボリ

 ◇ずっと踏ん張り続ける曲

 ――約1年ぶりのシングルですね。

 Keikoさん:この1年の間には「far on the water」というアルバムを出して、新たに録音した曲がたくさんあったので、自分たちとしては1年ぶりという感覚がなくて。でもニューシングルというだけで、また一つエンジンをかけてくれる感じで、自分たちを勢いづけてくれますね。曲もアッパーですし。

 ――「blaze」はどういう曲という印象ですか?

 Wakanaさん:サーッと風が駆け抜けていくような三声で始まるので、初めは“風を感じる曲”だと思っていたのですが、“blaze=炎”の熱気を帯びているので、どこか熱さも感じて。つまり熱風を感じる曲なんだなと思います。リードのHikaruが歌うメロディーラインが、少しとがったような迷いにも似たような“叫び”を感じたので、その上で言葉の響きのつながりやリズムは、もちろんいつもと同じように合わせているのですが、その中で“希望”的な何かが見えたらいいな……という気持ちで歌いました。

 Hikaruさん:私としては、ずっと踏ん張り続ける曲です。サビで抑揚が付くわけでもなく、ある一定の距離を叫ぶことなく、でもずっと意識を張り詰めながら歌っています。そういう意味では、とても難しい曲でした。原作を読ませていただくと「アルスラーン戦記 風塵乱舞」も、物語的に何か大きな山場があるというより、日常の中で強い信念を持ち続けるというストーリーなんです。だから自分の中で、そういう物語をベースにした歌詞と、メロディーや曲の構成をリンクさせながらレコーディングしました。

 Keikoさん:今回は全体的にHikaruがメインボーカルで……Hikaruの思いや歌詞のメッセージをストレートに表現しているというイメージでしたね。だから私も、潔く歌おうと思いました。Hikaruが作るテンションに、自分も心を寄せていきたい、と。Kalafinaは曲の途中で大きく展開する曲が多いのですが、この「blaze」は、珍しくそういうものではなくて。細かくは違ってても、はたから見ると同じように見える景色の道を、ただひたすらに突き進む……そういう曲だなって思います。

 ――ずっと張り詰めて歌うのは大変でしょうね。

 Wakanaさん:息がつけないので、とにかくパワフルさを忘れませんでした。レコーディング後は、みんな疲れきっていたよね。

 ――短距離走でもマラソンでもなく1500メートル走みたいな。

 Keikoさん:例えが分かりづらいんですけど(笑い)?

 Hikaruさん:でもまあ、そんな感じなのかな? 走ったことはないですけれど(笑い)。

 ――タイトルの「blaze」には、炎という意味がありますね。自分たちの中に炎をともしている気持ちでしたか?

 Hikaruさん:タイトルは、それぞれの人の心に宿っている炎のことで、目には見えないけどずっとともし続けているもの。先ほど話した、継続することに通じたタイトルですね。

 ――Kalafinaが心にともし続けている「blaze」は音楽や歌なんでしょうね。

 Keikoさん:そうですね。自分たちの活動とリンクする部分はあるよねって、みんなで話をしながらレコーディングしました。

 Wakanaさん:これは個人的にですが、“パワフルに美しく、そしてはかなさも込めてハイハモ(ハイトーンハーモニー)を歌いたい”と思っていて。叫びにも似た切なさを声に込めました! ちょっと説明が難しいですが……(笑い)。叫びだけれど、突出することなく、祈りのようにも響きたかった……という気持ちを表すのは難しかったです。

 ――後半には、コーラスでふわっとしたところが出てきますね。

 Keikoさん:そこは、走り続けている主人公が、一度止まってみている感じです。でも、決して歩みを止めるのではなく空を見上げるとか、聴く人の希望や救いにつながればいいな、と。止まることはネガティブな意味ばかりではなく、もっと前に進むために必要なときもあるんですね。実際に今自分たちがアリーナツアーに向けて活動をしている中でも、たまに止まって俯瞰(ふかん)から見つめることも必要で。そういう自分たちの心情も、ここにはリンクさせていますね。

 ――ミュージックビデオは廃虚っぽいところで撮られています。

 Hikaruさん:あそこは、山梨にある有名なサバゲー(サバイバルゲーム)場で、地面にはBB弾がたくさん落ちていたよね。天気がすごくよくて暑かったんですけれど、建物の中はひんやりしてて。ピリッとした空気感があって、ちょっと怖いくらいでした。サバゲー用だと思うんですけど、曲がり角に首だけのマネキンがあったり、物がつってあったり。何度も「うわっ」って驚きましたよ。

 Keikoさん:そんな閉鎖的な空間から、空の開けた映像に広がっていく。歌詞の緩急とも、ぴったり合った映像になりました。

 ◇「夏の朝」は四季の中でも特別な感じ

 ――カップリング曲の「夏の朝」は、打って変わって優しく温かいイメージの楽曲ですね。

 Keikoさん:タイトルの「夏の朝」というのは、四季の中でも特別な感じがしました。ちょっと童心に帰って、今日は何があるのか、今日はどんな1日にしようとか、普段とは違う感覚が感じられます。そんなところから歌詞も、自分だけの秘密の世界をにおわせるようなファンタジー感のあるものになっています。「blaze」のあとに、ちょっと一息入れていただけるものになっていますね。

 Wakanaさん:私は、可愛くて、寂しい感じがしました。すごく誰かのそばにいたくなるような……そんな気分。夏は海や山、花火にバーベキューにドライブにと、楽しいことばかり思い浮かべられるけど、「夏の朝」の歌詞には、終わらない“今”を信じている寂しさがあって、どこまでも続く空の先にはきっと、自分の望んだ未来が待っていてほしい……そんなはかない望みも感じましたね。

 ――子どもの頃の夏休みの記憶をたどるような曲かなと。

 Keikoさん:まさしくそういう感じです。小学生くらいまでの年ごろの思い出って、大人になって振り返るとどこかファンタジー感がありますよね。もう少し大きくなると、リアルな現実感がつきまとうようになってしまうので……。

 ◇3人の夏の思い出は…

 ――皆さんの夏の朝の思い出は?

 Hikaruさん:ラジオ体操のための早起きがつらかったです。そのころはまだ外で遊んでたので、プールに行って(肌が日焼けで)真っ黒でした。中学くらいからは、親と出かけるようなことも少なくなって、自分だけの世界にどっぷりでしたけど。

 Keikoさん:私は小学生低学年くらいの話ですけど、姉といとこの4人で遊んだ思い出が大きいです。

 Hikaruさん:何か「若草物語」みたいだね。

 Keikoさん:私は一番下でやんちゃだったから、お姉ちゃんたちにイタズラしていつも怒られてたけどね(笑い)。

 Wakanaさん:私は子どものころの話ではなくて、単純に夏の思い出なのですが……昨年の夏、お休みをいただいて地元の福岡に帰ったとき、いつも集まる学生時代からの仲間と目いっぱいはしゃぎましたね。今は結婚して子どもがいる子ばかりなので、みんなの子どもたちを遊ばせながら話していたら、時間を忘れるくらい笑っていました。夜は夜で、数人で天神に繰り出して、屋台のハシゴをしたりして、久しぶりの福岡の夜はすごく楽しかったです(笑い)。今年もアリーナライブが終わったら、福岡で遅い“夏”を楽しみたいなあ、なんて思っています。

 Keikoさん:でもこうして1曲を聴いて、夏の何かを思い出したり、久しぶりに誰かに連絡してみようと思ったり。どの曲もそうですけど、聴いてくれた方の日常に寄り添ってもらえたらうれしいです。直接的にファンタジックなものではなくても、夏ってこうだったよねって話をしたりするきっかけになるのが、音楽の力だなと思います。

 ◇Xmasライブは「お一人様でも安心して来て!」

 ――9月には武道館と神戸でアリーナツアーが。12月には「“Kalafina with Strings” Christmas Premium LIVE TOUR 2016」が控えていますね。

 Keikoさん:弦のカルテットとグランドピアノのサウンド、そして私たち3人の声という、Kalafinaの音楽をもっともシンプルな形で楽しんでいただきます。お客様とじっくり作る張り詰めた空気感や緊張感すら音にしてお届けしたいと思っています。

 Wakanaさん:クリスマスらしいカバー曲、Kalafinaらしい賛美歌も披露しますので、年の瀬の忙しい時期、少しでもゆったりとした気持ちになれるようにお届けしたいと思っています。

 Hikaruさん:この編成では最多公演数で、初めて行く場所、この編成では初めての会場もたくさんあって、とても楽しみです。

 ――12月23日と24日は東京・渋谷のオーチャードホールでコンサートですね。

 Keikoさん:私たちのコンサートは、お一人様のお客様も多いので、(クリスマスでも)お一人様でも安心して来てください!

 <プロフィル>

 Wakana、Keiko、Hikaruの3人組ユニット。劇場版「空の境界」主題歌プロジェクトとして、2008年にシングル「oblivious」でデビュー。これまでに19枚のシングルと5枚のアルバムをリリース。昨年リリースしたアルバム「far on the water」はオリコンランキングで2位を記録。日本のみならず、フランスや米国、アジア圏でも人気。

 9月10・11日に兵庫・神戸ワールド記念ホール、9月16日に東京・日本武道館で「Kalafina Arena LIVE 2016」を開催。12月2日の富山県民会館を皮切りに、12月23・24日の東京・オーチャードホールまで全11公演で「“Kalafina with Strings” Christmas Premium LIVE TOUR 2016」を開催する。

 (取材・文/榑林史章)

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