アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(あの花)、「心が叫びたがってるんだ。」などの脚本を手がけた岡田麿里さんが監督に初挑戦した劇場版アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」が、24日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。10代半ばで外見の成長が止まり、寿命は数百年というイオルフ民族の孤独な少女・マキアと、親を失ったばかりの赤ん坊から少年へ成長していくエリアルとの絆が描かれる。
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「別れの一族」と呼ばれるイオルフの民は、人里離れた土地でヒビオルという布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らしていた。マキアは両親がおらず、仲間に囲まれて穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで孤独を感じていた。そんなある日、イオルフの長寿の血を求め、メザーテの軍が攻め込んでくる。マキアは、なんとか逃げ出したものの仲間も帰る場所も失ってしまう。その矢先、親を亡くしたばかりの赤ん坊と出会い、エリアルと名付けて育てていく……というストーリー。
制作は「true tears」「花咲くいろは」などで岡田さんとタッグを組んできたP.A.WORKS。キャラクター原案は人気ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズなどの吉田明彦さん、音楽は「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」などの川井憲次さんが担当。岡田さんがシリーズ構成を担当したテレビアニメ「凪のあすから」のスタッフが集結した。主人公のマキアの声優を石見舞菜香さん、エリアルを入野自由さんが担当しているほか、茅野愛衣さん、梶裕貴さん、沢城みゆきさん、細谷佳正さん、日笠陽子さん、杉田智和さんらが出演している。
冒頭からイオルフの里の美しさに目を奪われる。長い年月を生きていても少年、少女のままのイオルフの人々もまた美しい。長老ラシーヌの「外の世界で出会いに触れたなら、誰も愛してはいけない」という言葉には切なさがあり、物語の世界観に引き込まれていく。
メザーテ軍に攻め込まれてからは、里を出たマキアと幼いエリアルの親子の物語が描かれる。周囲に助けられながら必死に母親になろうとするマキアには、思わず「頑張れ」とエールを送りたくなる。エリアルが青年に成長して、2人の抱える思いが交錯する場面では、現実の親子がすれ違ってしまうのと同じようなリアルさがあって胸をグッとつかまれる。そういう場面が多かった。マキアとエリアルの関係だけでなく、周囲のキャラクターの内面も丁寧に描かれている。誰かしら共感できるキャラクターを見つけられるのではないだろうか。
そんな一人一人のキャラクターたちを演じる実力派声優陣の演技も素晴らしい。石見さんは自信のない少女から“母親”へ成長していくマキアを演じ切り、入野さんは思春期に差し掛かり素直になれないエリアルを好演している。声優陣の演技、美しい映像、音楽が絶妙にマッチした感動作に仕上がっている。(岡本温子/MANTAN)
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