三宅乱丈さんのマンガが原作のテレビアニメ「pet」のスタッフに制作の裏側を聞く連載企画「メインクリエーターズインタビュー」。第3回は、音楽を担当した島秀行さんに、制作の裏側を聞いた。
ウナギノボリ
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「pet」は、「ぶっせん」「イムリ」などの三宅さんのマンガ。他者の脳内に潜り込み、記憶を操作する能力者たちの愛憎を描いた。アニメは「夏目友人帳」などの大森貴弘さんが監督を務め、「虐殺器官」などのジェノスタジオが制作する。
島さんはバークリー音大卒の作編曲家。人気声優の朗読劇「Kiramuneリーディングライブ」やフィンランドの映画「He Jaivat」などの音楽も手がけてきた。音楽制作にあたり、特にこだわっているのが「メロディー」と「歌心」だという。
「参加させていただく作品に完全に沿った音楽を提供するため、エゴイスティックなところを捨てようと思っています。特にこだわっているのがメロディー、歌心ですね。音と音のいろいろな意味のつながりです。作為的だったり、うそがあると、曲が真実味のない薄っぺらいものになる。一見、キャッチーにもなりますが、うそがあるものは誰も幸せにできませんし、淘汰(とうた)されてしまう」
「pet」の音楽制作にあたり、大森監督から「好きになようにやってほしい」と言われたという。「三宅先生が命がけで描いた作品。音楽も覚悟がないと作れない。生半可では作れない」と臨んだ。
「僕らしさは何だろう? 好きな音楽、ジャンルの広さを出したかった。こういう音楽じゃないといけないというジャンル的なこだわりがなくて、どんな音楽でも好きになるんです。この音楽は嫌い……と否定すると、その良さを吸収できなくて、成長が止まってしまう。『pet』では、ドラムンベース、グランジ、ブルース、ミニマル、クラシック、ジャズ、メタル……とさまざまな音楽を作りました。心証風景が多い作品です。いろいろなサウンドを使ったマインドスケープ的な音楽、個性的なキャラクターのためにそれぞれのテーマ曲を作りました」
「pet」に登場するのは個性的なキャラクターばかり。さまざなジャンルの音楽がそれぞれのテーマ曲となった。
「メイリンは、ピアノを使ったドリームトランス、桂木に関しては、『いなたいブルース』という指定がありました。司は、アンビバレントなところを出すために、激しいグランジ的な音にピアノを交ぜたり……と。原作は個性的なのですが、思い切った表現を受け止める懐の深さもあります。大森監督は、どんなに過激でとがった要素があっても、映像作品としてまとめるすごい手腕がある。脱帽です」
生演奏には、ユッカ・エスコラさん、トニ・ポルテンさんらフィンランドの世界的なミュージシャンが参加し、ヘルシンキのフィンボックス・スタジオでレコーディングされた。島さんは、フィンランドでアニメなどに関連したイベントをプロデュースするなど、同国との関わりも深い。その魅力を「フィンランドのミュージシャンは演奏テクニックが優れていて、特に音色が美しい。北欧の氷をたたいたような音を奏でます。彼らのおかげで完成度を上げることができました」と話す。
「pet」の音楽を「代表作の一つになったと思います」と自信を見せる島さん。映像だけでなく、魂がこもった音楽にも注目したい。
インタビュー動画が「pet」の公式サイト、ツイッターでも公開されている。
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