集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」が好調だ。今年1月に発表された「マンガ大賞2021」では、遠藤達哉さんの「SPY×FAMILY」、松本直也さんの「怪獣8号」とオリジナル作品が2作品ノミネートされ、「SPY×FAMILY」のコミックス第6巻の初版発行部数が、同アプリ発の作品では初めて100万部を突破したことも話題となっている。「ジャンプ+」の細野修平編集長は、「ライバルは『週刊少年ジャンプ』」といい、アプリならではのデータ収集を新人育成に生かし、「新しくて今までにない」とがった作品を生み出そうとしているという。マンガアプリならではの強みを聞いた。
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「ジャンプ+」から「SPY×FAMILY」や「怪獣8号」、テレビアニメ化されることも話題の「地獄楽」など数々のヒット作、話題作が生まれている。ほかのマンガアプリとの大きな違いであり、強みは「オリジナル作品の豊富さ」だ。「ヒット作を生み出すための大事なサイクル」として2020年は新作読み切りを150本以上掲載し、今年も読み切り掲載本数ナンバーワンのマンガ媒体を目指し、予算、予定を組んでいる。アプリ内でも新作読み切り、新連載は、作家のキャリアにかかわらず、最も目立つトップに掲載。ジャンプ各誌の人気作も掲載されている中で、オリジナル作品を前面に押し出している。
さまざまなデータが収集できるというアプリならではの強みもある。
「例えば、作品を1話完読したかどうかという完読率を測ることができるのですが、そのデータを新人へのアドバイスに生かすこともあります。読み切りの完読率は低い傾向にあるのですが、それは面白い、つまらないの以前に読みづらい場合が多い。ヒットする面白いマンガは読みやすい。アプリはスマートフォンで読んでいる読者が多いので、紙媒体以上に読みづらければ閉じられてしまいます。また、完読率は低いけれども、読者アンケートでは『面白かった』と評価される作品もあります。その場合は、作家さんに面白さを高めるのではなく、読みやすくするようにアドバイスすることもあります」
紙のマンガ誌の場合、週刊、月刊などのペースで刊行されているが、「ジャンプ+」では毎日、新作が掲載されており、連載作品によって更新される曜日・頻度が異なる。毎週掲載をマストにせず、作家のスケジュールに合わせて休載を挟むなど柔軟に対応しているという。
「作家さんにとって、描きやすい環境を目指しています。紙媒体に比べてウェブやアプリはギリギリまで締め切りを待てそうですが、校了は掲載の3~4週間前にして余裕を持つようにしています。締め切りを超えるなら休載にして、次のタイミングで載せるという方針なんです。フレキシブルな体制で描けることが作家さんにとってもよいことだと考えていますし、スケジュール的に描けないかもしれないと思っているような作家さんを逃さずに済んでいるところもあると思います」
新たなヒットを生み出す才能を逃さないよう、才能をがより多くの読者に見つかるように、さまざまな工夫もある。目下の目標は、月曜更新の「SPY×FAMILY」、金曜更新の「怪獣8号」と並び、全ての曜日に100万閲覧レベルの作品を作ることだ。
「今後は曜日ごとの競争を加速させていきたい。『週刊少年ジャンプ』の読者アンケートは有名ですが、それがあるからこそ作家間で『一番を取りたい』という競争精神が生まれ、面白いマンガが作られてきたと思います。『ジャンプ+』でも、閲覧数に応じて掲載順が決まります。より面白い作品を作るためにも、競争原理を大事にしたいと考えています」
「週刊少年ジャンプ」の「新しくて今までにないものが面白い」という“精神”は「ジャンプ+」にも受け継がれている。一方で、ウェブならではの予想外のヒットもあるという。
「『ジャンプ+』では、新しくて見たことがないもの、とがった作品を生み出したいと考えています。僕自身予想していなかったヒットも多いんです。昨年の大みそかに掲載された読み切り『呪いにかけられて~ちんちん爆発恋物語~』はかなり斬新なタイトルですが(笑い)、そこからは想像がつかないストーリーが好評でした。また、読み切りのSF作品の『地球記録0001』は、掲載前はニッチな作品だと思っていましたが、かなりバズったんです。ウェブは、斬新な作品がヒットを生む可能性を紙以上にはらんでいるのかもしれません」
最後に「ジャンプ+」のライバルを聞くと、「週刊少年ジャンプ」という答えが返ってきた。「『ジャンプ+』から『ONE PIECE』『鬼滅の刃』を超えるマンガを生み出す。ジャンプ超えは『ジャンプ+』を始めた時からの野望です。それは単純に部数の話ではなくて、それくらい存在感のある大ヒット作を生み出したい」と力を込める。今後のさらなる躍進に期待したい。
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