田村睦心:「ジョジョ」で得た度胸 「表現の幅が広がった」 熱い現場で感じた声優陣の絆

「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会
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「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会

 荒木飛呂彦さんの人気マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の第6部が原作のテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」。エルメェス・コステロ役の田村睦心さんは、「ストーンオーシャン」への出演が念願だったといい、エルメェスを演じることで表現の幅が広がり、役者としての「度胸がついた」と語る。エルメェスの魅力、作品にかける思いを聞いた。

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 ◇念願だった「ストーンオーシャン」出演

 「ジョジョの奇妙な冒険」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)1987年1・2合併号で連載が始まった人気マンガ。数世代にわたる個性的な悪人たちとの戦いを描いた壮大なストーリーや独特の擬音を用いた表現、独特な立ちポーズなどが人気を博している。第6部「ストーンオーシャン」はシリーズ初の女性主人公で、空条承太郎の娘・空条徐倫が、無実の罪で刑務所に収監され、脱獄しようとする。第13~24話が10月からTOKYO MX、MBSほかで放送中。第25~最終38話がNetflixで12月1日から配信され、2023年1月6日からテレビ放送される。

 田村さんと「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズとの出会いは、中学生時代、第6部「ストーンオーシャン」を読んだことだった。

 「すごく大人っぽい絵柄のマンガがあるなと思って、気になって読み始めたんです。グェスと徐倫の戦いの時、鳥の中に人間がいる描写やグェスのひょう変ぶりが『いやいや、怖い!』と思って。でも、怖いもの見たさもあって全部読んで『この作品、面白い』と。その当時、すでに声優という仕事に憧れはあったので、『いつかこんな格好いい作品をやれたらいいな』と思っていたんです」

 その後、2012年に「ジョジョの奇妙な冒険」のテレビアニメシリーズがスタートし、原作の各部がアニメ化されるにつれ、「第6部がアニメ化されたら出演したい」という思いが強まっていったという。

 「第3部、第4部がアニメ化されたぐらいから、事務所のマネジャーに『第6部のオーディションの話がきたら受けさせてください』とずっとお願いしていたんです。オーディションを受ける1年ぐらい前に富士山に登ったんですけど、その時も『6部に関わりたい』『エルメェスを演じたい』と願掛けをしながら登っていました」

 「ストーンオーシャン」には徐倫をはじめ魅力的な女性キャラクターが多く登場するが、田村さんは「エルメェスが自分としては一番しっくりくる」と感じていたという。

 「『映像研には手を出すな!』で金森という背が高い現実主義のキャラクターを演じたのですが、金森ができるなら、もしかしたらエルメェスのような格好いい女性も可能性があるかもしれないと思ったんです。『ストーンオーシャン』のテープオーディションの時は、エルメェス役をメインで受けて、記念受験で徐倫役も受けたのですが、演じながら『違う!』『全然可愛くない!』と思って(笑い)。エルメェス役が決まった時は何と言っていいのか分からないぐらいうれしかったです」

 ◇エルメェスの静かな闘志を表現 収録で涙も

 10月に放送をスタートした第13話以降では、エルメェスが姉・グロリアを殺したスポーツ・マックスに復讐(ふくしゅう)するために刑務所に入ったという事実が明かされた。田村さんは、エルメェスがスポーツ・マックスと戦うエピソードでは、「いい人の部分が出ている」と感じたという。

 「エルメェスは、復讐を果たすために一人で行動して、徐倫やフー・ファイターズに対しても突き放した言動が多かった印象です。もちろん復讐は遂げたいけれども、誰かの手を借りて成し遂げるのではなくて、自分の力でやりたい。周りの友達は巻き込みたくないという、彼女の根っからのいい人の部分が出ていたのかなと」

 スポーツ・マックスとのバトルでは、エルメェスの「静かな闘志」を表現するのが難しかったと振り返る。

 「これまでの戦いでは、激しく感情を出す感じで、スポーツ・マックスとの戦いでも『あいつを倒してやる!』という勢いでやろうとしたら、監督から『ちょっと抑えて。その熱は後々に残しておいて』と言われたんです。エルメェスは虎視眈々(たんたん)と狙っているから、『うわーっ』と燃え上がるのではなく、『ふつふつと怒りをためていってほしい』と。私はどちらかというと、言いたいことを言うタイプで、テンションも高いほうなので、“内にこめる”となると、『これ、伝わってます?』『これで合っているのかな?』と不安になりながら演じていました」

 第13、14話では、一人で戦おうとするエルメェスのもとに徐倫、フー・ファイターズが駆け付け、「あんただけの問題じゃない」と共闘する。田村さんは徐倫役のファイルーズあいさん、フー・ファイターズ役の伊瀬茉莉也さんの思いも感じながら演じていたという。

 「2人からは『その荷物、こっちにもよこしなよ』という空気を感じていました。頼もしいというか。もちろん見守ってくれている雰囲気もあるんですけど、ファイちゃんはジョジョ熱がそもそも熱いですし、伊瀬ちゃんも義に厚いところがあるので、『つらくなったらいつでも来いや』みたいな(笑い)。エルメェスが復讐を果たしたシーンの収録では、OKが出た直後に『すんすん……』と鼻をすする音が聞こえて、なんだろう?と思ったら、二人が涙を流していて『泣いてる!』と思って(笑い)。めちゃくちゃ温かい現場だなと思いました」

 ◇「オーマイガー!」も臆せず言える 全てが新たな表現に

 田村さんは、これまでさまざまな人気作に出演し、少年から大人の女性まで幅広いキャラクターを演じてきた。さらに、「ストーンオーシャン」でエルメェスを演じたことで「表現の幅が広がった」と感じているという。

 「『ストーンオーシャン』では、全てが自分にとって新しい表現でした。『~~じゃあない』といった独特の言い回しもそうですし、ほぼ全てのせりふで声を張る。また、あまり外画でも使わないような、『ヘイ!』『オーマイガー!』というようなせりふも臆せず言えるようになったような気がします。そんなせりふがある作品は、ほかにはないんですけど(笑い)。どんなせりふが来ても動揺しなくなったというか、表現の幅が広がったような感じがあります。度胸がついた気がします」

 改めて「ストーンオーシャン」の魅力を聞くと、「女性が血みどろになりながら戦う作品はあまりないと思いますが、戦うだけじゃないんです」と語る。

 「味方だけじゃなく敵に対する優しさ、愛情深さを感じます。それに、みんな女性の割にめちゃめちゃパワーがありますけど、パワーだけじゃない。スタンドを使った戦いが難解なので、頭脳を使うというか。『何が今起きてるんだ?』ということを推理する能力が彼女たちはすごく高い。見ている人も『これをどうやって解決していくの?』という場面を切り抜けていく様が見どころかなと思います」

 今後、エルメェスがどんな活躍を見せるかも気になるところだ。

 「エルメェスのスタンド『キッス』もとんでもない能力ですからね。そもそもスタンドにものすごいパワーがあるんですけど、エルメェスの場合、フィジカルも強いので、スタンドと同じスピードで蹴りを繰り出せるんです。嘘でしょ?と(笑い)。それに、エルメェスは元陸上選手志望で、走り方も格好いい! エルメェスはめちゃくちゃ強いので、しっかり見ていただけたらうれしいです。あとは、とにかくフー・ファイターズの勇姿(ゆうし)を見てください!」

 刑務所で繰り広げられる激闘、声優陣の熱い演技から目が離せない。

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