注目映画紹介:「蛇のひと」 失そうした課長は人間性を映す鏡 永作博美、西島秀俊が好演

映画「蛇のひと」の一場面 (c)2010WOWOW 提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、WOWOW 配給:角川シネプレックス
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映画「蛇のひと」の一場面 (c)2010WOWOW 提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、WOWOW 配給:角川シネプレックス

 満場一致で選ばれたという第2回WOWOWシナリオ大賞の映像化作品「蛇のひと」が25日から限定公開された。脚本は三好晶子さん。一人の人間が周囲にまき散らす影響について掘り下げた秀作サスペンスだ。真理をついた数々のせりふにドキリとさせられる。出演は永作博美さん、西島秀俊さんら。

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 三辺陽子(永作さん)は、アラフォー独身の女性会社員。部長(國村準さん)が自殺した日、陽子の直属の上司・今西課長(西島さん)が姿を消した。部長の葬儀の後、副社長に呼び出された陽子は、今西に一億円の横領の疑いがあり、その証拠を部長が握っていたことを聞かされる。そして、行方不明の今西を探し出すよう命じられた。今西は仕事のできる男だったが、社内には親しい者がいなかった。陽子は今西の友人らを一人ずつ当たっていく……。

 今西を捜す陽子の視点で、少しずつ明らかになっていく今西の素性。薄皮をはいでいくように本当に少しずつ明らかになるので、とても興味をかきたてられる。好印象のわりには、何を考えているのか分からない謎の人物・今西を演じる西島さんの存在感も相まって、この人物に引き寄せられるようだ。

 今西の周辺の人々のエピソードも面白い。みんな少しずつ不幸になっているという共通点、人によって今西をどういう人物と思っているか異なる点。今西はまるで人間性を映し出す鏡のようで、彼をどう思っているかで、その人の性格が分かる。もちろん、見ているこちら側もそうだ。映画の後半には、今西の衝撃の過去が明らかになる……。

 映画「重力ピエロ」の森淳一監督がメガホンをとった。俯瞰(ふかん)で撮影した、会社の階段がタイトルの「蛇」のようで印象に残る。室内、外、昼、夜、メリハリのある映像美が作品に深みをもたらしている。10月1日まで、角川シネマ新宿(東京都新宿区)、シネプレックス幕張(千葉市美浜区)ほかで限定公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

 *…「蛇のひと」のDVDが11月24日にソニー・ピクチャーズエンタテインメントから発売される。価格は3990円。

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