18日に公開された映画「東京公園」(青山真治監督)で、三浦春馬さん演じる光司の義姉、サバサバしていてカッコいいけれど繊細でひたむきな女性・美咲を演じた女優の小西真奈美さん。作品への思いや演じた役柄について、そして映画を楽しみにしている人たちへのメッセージなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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原作は、「東京バンドワゴン」などで知られる小路幸也さんの同名小説。東京の公園で、家族写真を撮り続ける大学生の光司は、幼いころに亡くした母の影響でカメラマンを目指していた。ある男性から「彼女を尾行して、写真を撮ってほしい」と突然の依頼が舞い込む。光司は理由も分からないままに依頼を引き受けるが、このことをきっかけに自分自身と、そばにいる女性たちと向き合うことになる。なんでも話せて一緒にいることが自然だった幼なじみの富永(榮倉奈々さん)。いつも優しくて力強く支えてくれる親の再婚で義理の姉となった美咲。そして、記憶の中の誰かに似ているファインダー越しにたたずむ女性(井川遥さん)。光司が3人の女性を見つめるとき、彼自身もまた変わり始めていく……というストーリー。
青山監督の作品は普段から見ていたという小西さん。オファーがきたときの感想は「独特の世界観を持っている監督、という印象がありました。(脚本を)読み終わった後は、明るくて、前向きで、さわやかな印象で、その(映画に描かれている)日常の感じを監督が映画にしたらどうなるんだろうという期待感がありました」と語る。
小西さんが演じた美咲については「美咲という女性のことが好きになっていきました。一見、サバサバしている女性なんですが、でもすごく真っすぐな思いを胸の中に抱えていて、それを言わないってことはいわゆる“臆病”とかではなく、言ってしまうことで何かを壊したりしてしまうんじゃないかという愛情ありきの思いのような気がしていて、そういう女性が一歩を踏み出す感じというのが好きだなあと思いました」と話した。
義弟役の三浦さんに対しては「三浦君とも芝居の話はしなくて、他愛のない会話をしていました」と振り返る。しかし、「どうでもいいことをしゃべって、笑い合っている感じがカメラの前に立ったときの何気ない姉弟みたいな雰囲気につながったのかなと思って。すごく大事な時間だったし、(三浦さんが)そういう他愛のない会話ができる役者さんでよかったと思いました」と振り返る。
この映画は公園を中心に物語が展開していく。小西さんにとって公園とはどういう場所なのか。「みんなが集まる場所であり、同じものを一緒に感じられる場所。近くにあって、季節も感じさせてもらえて、自分の気持ちも穏やかになったり誰かと出会ったりして、そういう意味では幅広い場所ですね」と話した。
「今後はどんな作品に出たいか?」という質問には、「『何はしたい』『何はしたくない』というよりは、年齢とか経験を重ねていったとしても、どんな作品(のオファー)がきても、それを面白がれたり、チャレンジしたい気持ちになれたり、そういう柔軟性を持っていつでも作品とか人に向き合っていたいなと思う」と真っすぐに前を見据えて答えた。
登場人物それぞれが“何かを乗り越えていく”姿が、見る者を優しい気持ちにさせる映画だが、“乗り越えていくこと”については「何をするにも遅すぎるとか、自分は無理だとかっていうのはなくて、それを決めているのは自分。年齢もいろんなことも超えて『よし!(やるぞ)』みたいなきっかけができたら、人は誰でもいつでも前に進めると思う。そのきっかけさえつかめたり、きっかけに出会えるような気持ちでいたりすれば一歩前に進めるんじゃないかと思う。何かで失敗したりしても、それを(乗り)越えたいと思い続けてさえいれば、何かきっかけでできると思うし、あきらめさえしなければいけるのかなっていう気持ちでいる」と力を込める。
とくに同性に対しては「女性は年齢を気にして、『もう30』とか『もう40』とか(言うけれど)それは自分が決めているだけであって、もちろん周りからいわれて『そっか(私はもう年だ)』って意識することもあるけれど、でも『もう30だから』と思って過ごしているのと『よし30になった、どうやっていこう』と思って過ごしている人とでは、着る服もメークも話すことも興味も変わると思う。女子はくくりを作られがちだけれど、それは(気にしなくて)いいんじゃないかなって思いますね」と劇中のように前向きだった。
作品の見どころについては「東京=(イコール)コンクリート、ネオン、人も車も多いというイメージがあるかもしれないんですけれど、緑がたくさんあるのも東京。自分がいる場所をある意味もう1回好きになったりする作品でもあるし、自分の身の回りにあることに向き合うきっかけさえできれば、前に進めると思わせてくれるような、そんな前向きな作品だと思います」と笑顔でメッセージを送った。
<プロフィル>
1978年10月27日生まれ。鹿児島県出身。98年につかこうへいさん演出の「寝取られ宗介」で女優デビュー。その後も「蒲田行進曲」(99年、00年)をはじめつかさん演出の舞台を踏む。01年にはNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」に出演。02年公開の初出演映画「阿弥陀堂だより」で、第48回キネマ旬報賞新人女優賞、第45回ブルーリボン賞新人賞、第26回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。以降、多くの映画に出演。09年の主演映画「のんちゃんのり弁」では毎日映画コンクール女優主演賞を受賞した。「相棒2」(和泉聖治監督・10年)、「指輪をはめたい」(岩田ユキ監督・11年秋公開予定)などにも出演。初めてはまったポップカルチャーは、映画「スタンド・バイ・ミー」(ロブ・ライナー監督)。
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