新藤兼人監督:震災から丸半年 「前を向いて生きよう」と力強く訴え 映画「一枚のハガキ」舞台あいさつ

「一枚のハガキ」舞台あいさつに登場した新藤兼人監督(左)
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「一枚のハガキ」舞台あいさつに登場した新藤兼人監督(左)

 日本最高齢の映画監督、新藤兼人監督(99)が10日、東京都内で開かれた最新作「一枚のハガキ」の舞台あいさつに登場。東日本大震災から11日で丸半年を迎えることに触れ「『負けない。俺はどんな事があっても負けない』と、前を向いて歩くことだけを心掛けていました。一粒の麦をまいて、それを見つめながら、前を向いて生きていれば、何か生きがいを勝ち取る気持ちが出てきました。だから、私は、あまり頭は良くないですけど『前を向いていれば前向きな仕事が展開する』という単純な生き方を持って生きています。『前を向いて生きよう』、それが私の思いです」と訴えた。

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 映画は、新藤監督自身の戦争体験を基に、戦争の悲惨さを描いた。戦争末期に100人の中年兵が召集され、くじ引きで次の戦地が決められることになり、宝塚に赴任する松山啓太(豊川悦司さん)は、フィリピンへ赴任となる森川定造(六平直政さん)の妻・友子(大竹しのぶさん)から一枚のはがきを託される。定造は自らの死を予感して、啓太が生き残ったら、定造がはがきを読んだと妻に伝えるよう依頼する。そして終戦後、生き残ったのは啓太を含んだ6人だけだった。啓太は故郷に戻るが待っている者はおらず、そしてハガキを持って友子を訪ねる……という物語。8月6日に先行公開、同13日に全国公開され、観客動員数は9万人を突破。興行収入は間もなく1億円を突破する見込みという。

 同映画が米アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表出品作に22作品の中から選出されたことを受け、新藤監督は「多分、うまくいくと思います」と笑い、受賞に自信を見せた。新藤監督は「私は今まで、たびたび絶望してきました。金がない。金がないぐらいひどい絶望はありませんね。ですが、私は金がないからといって、泣かないことにします。石のつぶてが飛んできて、額にぶつかってきても前を向いて絶対に泣かない。泣くのは家に帰って、布団にもぐりこんで泣くことにするんです。人の前では泣かない。泣くと気が緩んで勇気が出なくなるんです。だから、何がきても泣かない」と力を込めて語った。

 この日は、主演を務めた豊川さん、友子役の大竹さんからメッセージが届いた。豊川さんは観客への感謝や、米アカデミー賞の日本代表出品作に選ばれたことを喜んだ後、「僕にとっても『一枚のハガキ』は特別な作品です」とコメント。大竹さんは「監督が映画を通して叫び続けてきたこと、そして最後に言っておかなければ ならないことが、今、日本中の人たちの心に広がっているのですね。 (米アカデミー賞日本代表作選出で) 監督の言葉が、 監督の思いが、 世界中の人たちに届くことができるのも 夢じゃありません。監督、本当におめでとうございます」とコメントしている。(毎日新聞デジタル)

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