注目映画紹介:「ミケランジェロの暗号」画商の息子と使用人の息子 運命が振り子のように揺れる

「ミケランジェロの暗号」の一場面 (C)2010 AICHHOLZER FILM & SAMSA FILM ALL RIGHTS RESERVED.
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「ミケランジェロの暗号」の一場面 (C)2010 AICHHOLZER FILM & SAMSA FILM ALL RIGHTS RESERVED.

 アカデミー賞外国語映画賞受賞作「ヒトラーの贋作(がんさく)」のスタッフが贈る「ミケランジェロの暗号」(ウォルフガング・ムルンベルガー監督)が全国で公開中だ。久々にハラハラした。何度も見たくなるような快作だ。舞台は1930年代から戦後にかけてのオーストリア。幻のミケランジェロの絵の行方を追う。音楽もとても印象に残る。

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 ユダヤ人の画商カウフマン家は、国宝級のミケランジェロの絵をひそかに所蔵していた。ある日、カウフマンの画廊に、連絡を絶っていた使用人の息子ルディ(ゲオルク・フリードリヒさん)がやって来る。幼いころから一緒だった息子のビクトル(モーリッツ・ブライプトロイさん)は、久しぶりの再会に喜び、気を許して絵のありかを教えてしまう。ナチス親衛隊に入隊したルディは、出世のために絵のことを軍に話し、軍は戦況を有利にするために絵をムソリーニに献上しようと企てる。絵はカウフマン家から没収され、引き換えにスイスに逃れるはずの一家だったが、別々の収容所に入れられてしまう。やがて絵が贋作であることが判明。本物の絵は一体どこにあるのか……というストーリー。

 裕福なユダヤ人画商の息子ビクトルと使用人の息子ルディ。戦争は2人の立場を大きく変えてしまった。だが、その立場もことあるごとに入れ替わり、運命の振り子が行ったり来たりする。絵はどこにあるのかという謎解きは、ユダヤ人であるビクトルが生き残れるのかというハラハラ感と重なって倍増する。戦争に巻き込まれたユダヤ人を悲劇的に描かずに、難題に向かっていく姿を力強く描く。皮肉たっぷりでなんともユーモラスなシーンばかりだ。主人公ビクトルを魅力的に演じているのは、ドイツのベテラン俳優ブライプトロイさん。素晴らしい演技で、人間の強さ、そして弱さもにじみ出ている。10日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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