会社を突然解雇された37歳のエリートサラリーマンが、家族の支えによって新たな道を踏み出すまでを描く映画「カンパニー・メン」が公開中だ。リストラされる主人公ボビーをベン・アフレックさんが演じているほか、彼を解雇した会社の重役役でトミー・リー・ジョーンズさん、ボビーの義兄役でケビン・コスナーさん、さらにクリス・クーパーさん、マリア・ベロさんといった米アカデミー賞と縁深い名優たちが絶妙なアンサンブルを奏で、映画を盛り上げている。自ら脚本を書きメガホンをとったのは、人気テレビシリーズ「ER緊急救命室」や「ザ・ホワイトハウス」などの演出、脚本家として知られるジョン・ウェルズ監督。劇場用映画の初監督作となる今作について、ウェルズ監督に聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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−−製作の経緯を教えてください。
企画自体は、00年に起こったドットコムバブル(90年代後半に米国市場を中心に起きた新興IT関連企業に対する異常な投資熱のこと)の崩壊のころから温めていました。その後7年間、バブル崩壊を経験した何百人もの人たちにインタビューを重ね、その過程で、彼らが私を信頼してくれたように感じましたし、その気持ちに確実に応えたいと思ったのです。
−−ウェルズ監督のご家族の体験も生かされているそうですね。
(家族の一員の)彼は巨大な電気会社に勤めていて出世も早かったが、会社が吸収合併されたとき、解雇された5000人の中に入っていました。彼自身、次の職場はすぐに見つかると思っていたようですが、経済が縮小していく中で、再就職に数年かかってしまった。彼の体験に触発されリサーチを始めたが、実は同じようなことが多くの家族にも起こっていたのです。
−−今作に登場する巨大企業にはモデルとなった会社はあるのでしょうか。
ある一つの会社をモデルにしたわけではありません。しかしリサーチでは、巨大化して手に負えなくなった工業会社に焦点を合わせました。「USスチール」はその一つですし、「サンビーム」「GE」などもそうです。企業は大きくなるにつれて従業員とのつながりをどんどん失っていった。結果、従業員に個人的な責任を感じる余裕もなくなってしまったのです。
−−よくここまで名優たちがそろいましたね。
理想とする俳優のリストを作り、その第1候補からオファーしていくという形でキャスティングを始めました。全員がイエスという返事をしてくれたことに、私自身とても驚いています。
−−アフレックさん起用の理由は。
ベンは、とても気に入っている役者です。一見傲慢(ごうまん)だが、憎めないキャラクターを演じることができる。彼をキャスティングすることで、米国例外主義的な傲慢さを表現できると思いました。
−−コスナーさんについては。
彼を起用できたのは、とても幸運でした。小さいながらも重要な役であるジャックをやってくれるとは思っていませんでしたが、脚本を気に入ってくれ、スケジュールさえ(監督側で)合わせてくれれば喜んでやるといってくれたときは、すぐに「イエス」と返事をしました。ジャックというキャラクターは、米国のそれまでの世代……建設や製造の中小企業で一生懸命に働き、周囲の面倒を見ながら仕事に対する責任を果たしていたよき世代……の象徴といえます。だがそれは、企業が組織化されていく中で失われてしまった。それは偉大なる損失だと、私自身思っています。
−−物語には、監督の少年時代の大工のアルバイト経験も盛り込まれていますね。
私は中流家庭で育ちました。生活に余裕のあるほうではなかったので、自分たちが住む家は、父や兄と一緒に自分たちで建てました。そのときの経験は、大学院を卒業するまでの6年半、さらにライターとして仕事にありつけるまでの間、非常に役立ちました。自宅のガレージには、まだ道具ベルトが残っています。食いぶちを稼ぐのに、またいつ必要になるか分からないですからね。
<プロフィル>
米バージニア州アレクサンドリア出身。コロラド州デンバーで育ち、カーネギーメロン大学卒業。その後、南カリフォルニア大学で映画とテレビ学部の修士号を取得。80年代後半からテレビを中心にクリエーターとしてキャリアを重ね、代表作に「ER緊急救命室」「ザ・ホワイトハウス」「サード・ウォッチ/NY事件ファイル」「サウスランド」などがある。映画プロデューサーとしても活躍しており、「エデンより彼方に」(02年)、「DOOMドゥーム」(05年)、「アイム・ノット・ゼア」(07年)、「いとしい人」(07年)などの製作総指揮や製作を務めている。今作「カンパニー・メン」が劇場長編映画の監督デビュー作。現在、2作目の劇場用映画として、劇作家トレイシー・レット(Tracy Letts)さんによるピュリツァー賞受賞作「August:Osage County」の映画化をメリル・ストリープさんとジュリア・ロバーツさん主演で企画中。
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