第二次世界大戦中、イタリア・ボローニャ近郊の山村で起きたドイツ兵による住民虐殺事件を題材に、少女の目線を通して戦争を描いた「やがて来たる者へ」(ジョルジュ・ディリッティ監督)が公開中だ。移ろいゆく季節の中に農民の生活を抑えめの演出で描き出し、リアリティー満点で重厚。イタリア本国内のアカデミー賞主要3部門受賞ほか、各国の映画祭で多数の賞を受賞している。
ウナギノボリ
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1943年。イタリア北部の小さな山村。大家族で暮らす8歳の少女マルティーナは弟を亡くしたショックで口がきけなくなってしまった。一家は種をまき、おばたちはダンスに出かけ、男たちは語り合う。忍び寄る戦争の影はあるものの、日々の暮らしは普通に続いていた。マルティーナには再び弟が生まれるといううれしい予定もある。しかし戦火が迫ってくる。都会からは疎開してくる人々。若者はパルチザンに加わった。ドイツ軍とパルチザンの攻防は激化し、パルチザン掃討作戦が始まる……。
前半はボローニャ地方の村の生活が、季節にしたがって静かにつづられていく(ここ、ウトウトしないできちんと見て!)。それだけに、後半の衝撃といったら……。気づいたら泣いていた。押し寄せるドイツ兵とパルチザンのレジスタンス運動。少女の目を通して見る戦争は、マイケル・サンデル先生に「さあ、この場合、どっちが正当?」と問われたように、何がいいのか悪いのか考え込んでしまうが、一つだけいえることは、この少女の幸せとは何かを考えることが大事だということだろう。少女の視線は敵・味方ではなく「人間」を映し出し、2日間で700人以上の民間人が死んだという史実に客観性をもたらしてくれる。
村全体の、引いては人間の悲劇として深い洞察を与えるラストシーンは悲しくも美しい。果たしてこの世界は、生まれてきて良かったと思える世界だといえるのだろうか。考えさせられる映画だ。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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