黒川文雄のサブカル黙示録:ソーシャルゲームの増加 ゲーム人口の拡大に感謝

過去最高の来場者でにぎわった東京ゲームショウの様子
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過去最高の来場者でにぎわった東京ゲームショウの様子

 9月20~23日、幕張メッセで「東京ゲームショウ2012」が開催されましたので、足を運んできました。今回は、マイクロソフトが出展を見合わせたため、ハードメーカーはソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のみとなりました。そのSCEでもコンテンツのダウンロード販売や、モバイル展開も意識しており、デバイスを問わない方向にシフトしているように思いました。

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 今年の会場を支えたのは、ソーシャル系のスマートフォン向けのコンテンツパブリッシャーでした。家庭用のゲ−ムメーカーの出展コンテンツも、スマートフォン向けのコンテンツが多く見受けられました。ある報道によれば出展コンテンツの7割がソーシャル系コンテンツとのことで、時代の流れを感じさせます。

 そして、新興系のメーカーのブースを見ると、かつての国内のゲームソフト会社の栄光を見るような思いがしました。ブシロードのプロレスの特設リングは、プロレスとトレーディングカードゲームの融合という新モデルなど積極的な姿勢を感じます。

 GREEのブースでは、かつてのSCEや有力パブリッシャーを思わせるような多くのコンパニオンを配していました。気になったのは展示されたゲームで、従来のタップしてクリアしていく簡単なゲームは徐々に姿を消しつつあるようです。むしろ従来の家庭用ゲームタッチのRPG、シューティング、育成ゲームなどがスマートフォン的な解釈で再構築されつつあることが印象的でした。

 ソーシャルゲームのアプリメーカーであるgloopsのブースは、コンパニオンのコスチュームが刺激的だったこともあり、コンテンツよりもコンパニオンのほうが注目されていたようです。このあたりもかつての家庭用ゲームメーカーが踏んできた轍(わだち)であり、「新興系はハデだ」という指摘は的外れでしょう。

 私が感じたことは、ソーシャルゲームは新市場や新しいユーザーの育成、コンテンツの開拓ができているということです。簡単なソーシャルゲームもゲームシステムが練りこまれているのは明らかで、その理由は家庭用ゲーム機のソフトメーカーからクリエーターが転職したり、ナレッジ(知識)、ノウハウの流入もあるのでしょう。また5月のコンプガチャ規制以降、新しい手法を模索した結果もあるでしょう。それによって、ガラケーやスマートフォンから新規でエントリーしてきたユーザーが、徐々に成長してくれているのではないかと思うのです。

 主催者の発表では、来場者数は約22万3700人で、昨年の約22万2600人を上回り過去最多となりました。私が家庭用ゲームメーカーの関係者ならば、ソーシャルゲーム系の会社に「ゲーム人口の拡大に貢献してくれてありがとう」と感謝の言葉を述べたいですね。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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