注目映画紹介:「カミハテ商店」 断崖絶壁の商店を営む女主人の心の変化をじわじわと描き出す

(C)北白川派
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 初老の女性が自殺の名所である断崖絶壁のそばで商店を営んでいる。その女性の心の変化を、人々とのふれあいの中からじわじわと描き出す「カミハテ商店」(山本起也監督)が10日に公開された。実家で暮らす祖母を映し出したドキュメンタリー作で知られる山本監督の、劇場映画デビュー作。京都造形芸術大映画学科の学生とプロが共同でつくる映画製作活動「北白川派」第3弾。

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 山陰の港町、上終(カミハテ)で千代(高橋惠子さん)は、母親から引き継いだ小さな商店を一人で切り盛りしている。生活雑貨のほか、パンを焼いて売っている。いつからか、自殺志願者がパンと牛乳を買い求めるために訪れるようになった。千代は役場の須藤(水上竜士さん)から「気になる人がいたら通報を」といわれるが、死に行く人を止めることはしない。ただ、断崖から靴を拾って、持ち帰ってくるだけだ。ある日、わけありな母子が店にやって来て……というストーリー。

 こんなしかめっ面の主人公、なかなか見たことがない。自殺の名所の商店の女主人。しかも、この千代は自殺志願者を諭したり、温かく包み込んだりは決してしない。むしろ「なぜ、自殺を止めなきゃならないの」と思っているのだ。パン生地をバッスン、バッスンとたたきつける姿は、なんだか怨念(おんねん)じみていてホラーっぽい怖さも感じる。しかし、やがて千代の過去が分かってくる。離れて暮らす弟との接点も見えてくる。雪の降りしきる山陰地方のひなびた町で、季節の移ろいとともに少しずつ溶けていく雪のように、千代の心も解けていく。千代の微妙な心の変化を高橋さんが上手に表現している。バスの運転手役のあがた森魚さんもいい味を出している。寺島進さんも出演。プリミティブなリズムを刻む谷川賢作さんの音楽も印象に残る。10日からユーロスペース(東京都渋谷区)、京都シネマ(京都市下京区、24日~)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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