ブック質問状:「輝天炎上」 デビュー前から仕込んだ海堂尊の一大トリックに興奮

海堂尊さんの「輝天炎上」(角川書店)のカバー
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海堂尊さんの「輝天炎上」(角川書店)のカバー

 話題の小説の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、海堂尊さんの「輝天炎上」です。角川書店編集局の足立雄一さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 映画、ドラマ化もされた「チーム・バチスタの栄光」から始まる田口(公平)&白鳥(圭輔)ペアが主人公の「バチスタ」シリーズの完結編「ケルベロスの肖像」が昨年7月に刊行されました。本作「輝天炎上」はその「ケルベロス~」のアナザーストーリーであり、「螺鈿迷宮」の主人公で医学生・天馬大吉の視点で描かれた作品です。

 海堂さんがデビュー前から考えていた一世一代の大トリックもあり、また医療の最新情報も満載とシリーズ未読の方も楽しめる医療エンターテインメント小説となっております。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 海堂さんは、前述の「ケルベロスの肖像」で大学病院(東城大学)と地域医療(碧翠院桜宮病院)の対決を描いて「バチスタ」シリーズを閉じようとされたのですが、「ケルベロス~」を執筆していくうちにどんどん碧翠院桜宮病院サイドの物語が膨らんでいきました。そこで、碧翠院桜宮病院側の物語を天馬大吉の視点から描いて1冊の本にしようと思いつき、今回の「輝天炎上」が誕生したのです。このような経緯で生まれた作品なので、クライマックスには海堂作品のメーンキャラクターが勢ぞろいしますので、ファンの方はぜひご期待ください。

 −−海堂さんはどんな方でしょうか。

 海堂さんはバイタリティーにあふれた方で、筆が速いことでも有名です。弊社より10年12月に刊行した「モルフェウスの領域」の全7章のうち後半の4章分は何と9泊12日の南アフリカ取材旅行中に書き上げていただいたのです。最終章にいたっては、南アフリカ・ヨハネスブルクから成田空港に戻ってくるキャセイ・パシフィックの機内で完成しました。私もこの取材旅行に同行したのですが、機内の隣の席に座った海堂さんが猛烈な勢いでノートパソコンに打ち込んでいく姿がいまだに忘れられません。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮したこと、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 海堂さんがデビュー前から仕込んでいた一大トリック、これには本当に驚かされました。まったく予想していなかったトリックだったので、最初に原稿で読んだときは思わず、「おおおおぉぉっ」と興奮の雄たけびをあげてしまったほどです(笑い)。

 −−今後の展開は。

 海堂作品のメーンステージである東城大学の“現代”の物語は「輝天炎上」で閉じられたことになります。ただ、北海道新聞、中日新聞、東京新聞、西日本新聞で連載された“未来”の物語「アクアマリンの神殿」を現在、海堂さんに改稿していただいているところです。この「アクアマリンの神殿」は「モルフェウスの領域」の続編であり、佐々木アツシくんが主人公の青春小説です。「アクアマリンの神殿」も改稿作業が終わり次第、皆さまのお手元にお届けできると思いますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 海堂作品史上最大の因縁であった東城大学と桜宮一族の確執が、本作にてついに解きほぐされます。「螺鈿迷宮」ではヘタレ大学生だった主人公天馬くんの成長物語としても楽しんでいただければと思います。

 角川書店編集局 足立雄一

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