実在のリンゴ農家・木村秋則さんが無農薬リンゴを実らせるまでを記録した書籍を、「チームバチスタの栄光」などの中村義洋監督が家族の物語を軸に映画化した「奇跡のリンゴ」が8日、公開された。阿部サダヲさんと菅野美穂さんの支え合う夫婦に泣かされる。
ウナギノボリ
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原作は石川拓治さんの「奇跡のリンゴ 『絶対不可能』を覆した農家 木村秋則の記録」(幻冬舎文庫)。青森県弘前市が舞台。秋則(阿部さん)は学生時代の同窓生・木村美栄子(菅野さん)と結婚し、木村家の農家を継いだ。美栄子は年に十数回も散布する農薬の影響で皮膚がかぶれて寝込むことがあった。妻の体を思い、無農薬のリンゴが栽培できないかと考えた秋則。それは何年も農薬や肥料をやって栽培しなくては実らないリンゴにとって、絶対不可能だといわれる領域だった。周囲に陰口をたたかれながらも、結果に向かって必死で研究する秋則だったが、リンゴは実らないどころか、木が病気になり、害虫がたかる。一家は公共料金も払えないほど貧しくなっていき、3人の娘たちにろくに食べさせてやれなくなってしまう……というストーリー。
個性的な実在の人物の生き方を丸ごと伝えてくる。一つのことに夢中になりやすい性格で、人と違うことを恐れない秋則。すぐに結果を生み出したい現代とは全く逆を行くその生き方に感嘆する。美しい津軽富士とのどかな畑の風景の下で、せっせと不可能な無農薬リンゴ作りに挑む秋則の姿は、オール青森ロケが効いてリアリティー満点だ。満開の花が咲いたリンゴ畑のシーンは圧巻。家族と苦労に焦点を当てた映画も素晴らしいが、環境問題に触れている原作本もとても興味深いので、未読の方にぜひオススメしたい。8日から東宝シネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士としてとぼとぼ歩き中。
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