2012年に公開されたサバイバルアクション「ハンガー・ゲーム」の2部作の第2章「ハンガー・ゲーム2」が全国で公開中だ。前作で若者12人によるサバイバルゲームを勝ち抜いたヒロイン、カットニス(ジェニファー・ローレンスさん)が、前作の森から今度は舞台を島に移して新たなゲームに身を投じる姿が描かれている。前作のヒットを受けて、今回初めてメガホンをとったフランシス・ローレンス監督に話を聞いた。
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−−今回初めて、このシリーズの監督を務められたわけですが、ゲイリー・ロス監督が手掛けた1作目の成功によるプレッシャーはありましたか? ファンのことはどの程度意識されたのでしょうか。
この映画で僕はとても優れたクルーに囲まれていたから、ストレスを感じることもなかったし、みんながハッピーに仕事ができて、今のところ結果もみんなに満足してもらっていると思う。1作目の成功は今回の映画を作る上でのサポートになっているし、もちろん前作よりさらに成功させたいというプレッシャーはあったけれど、理想的な環境で作ることができた。
正直、ファンに対してはそんなに心配はしていない。僕らは原作に忠実だし、ファンに好かれた1作目のキャストにも続投してもらっている。幸い新しく参加したキャストに対するファンの反応もいいようだ。今回のキャストは前回よりも増えて、さらに強力なメンバーになっているよ。原作のストーリーに忠実でありながら、キャストが増えていることはファンにとっていい意味でサプライズかもしれない。今回はこれまでのハンガー・ゲームのファンはもちろん、そうではない人々にも訴求してくれればと願っている。
−−今回脚本にはアカデミー賞の受賞経験があるサイモン・ボーファイさんが参加していますね。ボーファイさんの加入にどんなことを期待していましたか。また、シナリオのどんな点をあなた自身気に入っていますか。
僕らはまず原作に可能な限り忠実であることを心がけた。僕自身、原作を気に入っているし、脚本の段階では原作者のスーザン・コリンズと密に連絡を取り合った。ただ400ページもある原作の要素をすべて映画化することはとても無理だから、どの部分を削除するかで奮闘した。サイモンの参加はその点で、映画的な視点をシナリオに与えてくれたと思う。
−−前作に比較して今作の特徴を挙げるとすれば、どんな点がありますか。また、あなたの考える見どころを教えてください。
1作目とは異なるタイプといえる。今回の方がストーリーが複雑で、より神話的な比喩(ひゆ)が含まれている。カットニスは反乱のシンボルとして民衆から見られるようになる。と同時に、ラブロマンスの要素も強くなっている。それも原作を通して大事な要素だ。アクション映画という点では、アクションそのものが売りなわけではない。今回の闘技場は前回とまったく異なる。彼らはお互いに戦うより、環境的な困難に直面する。今回の闘技場はさまざまなことが起こる、とてもアクティブな場所なんだ。
このシリーズを通して僕が引かれたのは、独創的な世界を創造するという点だった。そういう意味でこのシリーズはとてもビジュアル的で、刺激的なチャレンジだった。テーマ的にも暴力や戦いの結果について、それがいかにキャラクターに影響をもたらすかといった点は興味深い。その中でカットニスのキャラクターは前作よりも成熟している。スーザン・コリンズの原作が多くの人に愛されていることには僕自身も共感を覚えるし、それを映画化することによってさらに多くの人に知ってもらえることは意義があることだと思う。
−−ジェニファー・ローレンスさんを取り巻く状況は1作目とはまったく異なると思いますが、彼女を女優としてどのように評価しますか。
僕は1作目を監督していないし、以前は彼女のことを知らなかったから当時と比べることはできないけれど、彼女を取り巻くエキサイティングな状況によって彼女自身が変わったとは思わない。実は僕らがちょうど撮影をしている最中にジェニファーはアカデミー賞にノミネートされたんだ。そして授賞式の2日後、彼女はハワイのジャングルのセットに戻って撮影を再開したけれど、以前とまったく変わらず、ハードなスケジュールをこなしてくれた。彼女は本当に素晴らしい女優だよ。とても頭の回転がいいしユーモアがある。あの年代で僕が会った女優の中で、恐らくもっとも直感的なタイプだ。彼女が役になり切るのにそれほど時間がかからないのに、とてもニュアンスに富んだ演技を見せてくれることに驚かされたよ。
−−この物語には現代にも通用するような政治的社会的メッセージが含まれていると思いますか。
例えば、ハンガー・ゲームそのものなど、現実には存在しない要素は含まれているけれど、暴力は現代にもあるし、それが人々にもたらす結果は現実の世界でもあまり変わらないと思う。これはスーザン(・コリンズ)ともよく話したことだ。彼女の父親は軍人で、そのために戦争がもたらす影響を常に考えさせられて、そのことが彼女がこの本を書いた大きな理由の一つでもある。それはこの映画の重要な点で、とくに若い観客層をターゲットにしたこういう映画にとってはめずらしいことではないかな。
−−この映画を作る上であなたが侵したくない領域、あるいはモットーとしたことなどはありましたか。
僕にとっては常に感情面が最も大切だった。例えば、誰かが殺されるのを描く方法は何千とあるかもしれないけれど、映像的に衝撃的に描く方法に僕は興味がない。そこで与えられるエモーションこそが大事だ。そして感情的にキャラクターに共感できること。観客が単に見物客となるのではなく、そこで何かを本当に感じてくれることが大切だと思う。
<プロフィル>
1971年3月26日生まれ、オーストリア・ウィーン出身。ミュージックビデオの監督として、エアロスミスやジェニファー・ロペスさん、ブリトニー・スピアーズさん、レディー・ガガさん、ビヨンセさんなど多くの人気アーティストの作品を手がける。2005年にキアヌ・リーブスさん主演の「コンスタンティン」で映画監督としてデビュー。07年にはウィル・スミスさん主演「アイ・アム・レジェンド」を手がけた。 11年にはロバート・パティンソンさん主演「恋人たちのパレード」の監督を務めた。今後は、「ハンガー・ゲーム」シリーズの3、4作目の監督に決まっている。
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