ロバート・デ・ニーロさんとジョン・トラボルタさんという2大俳優が初共演したサスペンスアクション映画「キリングゲーム」(マーク・スティーブン・ジョンソン監督)が11日から全国で公開された。戦争による後遺症を抱えた男2人が、大自然の中で壮絶な死闘を繰り広げる。“痛み”を感じさせる描写がたびたび登場するため、観客もそれなりの覚悟が必要だ。
ウナギノボリ
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米アパラチア山脈の奥地で自然に囲まれ隠遁生活を送る元米軍人のベンジャミン・フォード(デ・ニーロさん)。彼の前に、突然、エミール・コヴァチという男(トラボルタさん)が現れる。フォードにとっては見知らぬ他人だったが、実は2人は18年前、旧ユーゴスラビアで起きたボスニア紛争時に出会っていた。当時の出来事からフォードに恨みを持つコヴァチは、フォードを狩りに誘う。何も知らないフォードはその誘いに乗る……という展開。
冒頭のボスニア紛争の凄惨(せいさん)な描写をへて、現在のアパラチア山脈の大自然が映る。その景観のギャップが、戦争の悲惨さを一瞬で説明する。同時に、2人の男が痛みを与え合いながら進む物語は、戦争がいかに悲惨で、人間の魂を破壊してしまうものであるかを観客に知らしめる。脚本は「スノーホワイト」(2012年)を手掛けたエバン・ドーハティさん。今作のプロデューサー、ポール・ブルースさんは「脚本を読んだ瞬間からほれ込んだ。独創的で予測不可能」と語っているが、確かに、デ・ニーロさんとトラボルタさん、どちらが生き残るかは予測できない。コヴァチが“悪役”と思うのは最初だけ。フォードが反撃を開始し、コヴァチに痛みを味わわせるあたりからは、もはや両者のどちらが善でどちらが悪なのかの判断がつかなくなる。見る者の心にも突き刺さる痛みが、戦争後遺症の根深さを物語る。その分、結末にいささか拍子抜けするものの、それでも許せてしまうのは、デ・ニーロさんとトラボルタさんの2人の見応えのある演技のたまものだろう。11日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の制作会社、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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