テレビ東京の深夜番組「ゴッドタン」の人気企画で、昨年映画化されスマッシュヒットを記録した「キス我慢選手権」の映画化第2弾となる「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ」(佐久間宣行監督)が公開中だ。「ゴッドタン」は、川島省吾さん(劇団ひとりさんの本名)、お笑いコンビ「おぎやはぎ」らが出演するバラエティー番組で、「キス我慢選手権」はセクシーな美女に誘惑された芸人たちがアドリブで芝居をしながら1時間キスを我慢するという人気コーナー。今作では高校を舞台に、何者かがコントロールする世界で翻弄(ほんろう)されながらキスを我慢する姿を、ひとりさんが全編アドリブで演じる。伊藤英明さんほか、福士誠治さんら実力派俳優やお笑いタレントが世界観を作り上げ、ひとりさんと演技でぶつかり合う姿は必見。主演のひとりさんと、番組レギュラーで映画内ではなりゆきを見守る「おぎはやはぎ」の小木博明さんと矢作兼さんに話を聞いた。
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第1作のヒットを受け、公開して4~5カ月後には今作の製作が決定し、今年6月末に撮影が行われた。撮影での手応えを聞くと「正直、テレビ版の時から手応えは感じないまま」とひとりさんは話し、「わけが分からないまま、ただシチュエーションの中でもみくちゃにされて帰るようなものなので、手応えというのはあんまり感じたことがない」と理由を説明する。同企画の撮影後は、あとからもっとこうしたほうがよかったということが「山ほどある」といい、「5秒後に思っていたりすることも‥…」と、アドリブの難しさを語る。
テレビ版はもちろん、映画版でもどういう話かを知らされず、アドリブで対応しているひとりさん。失礼は承知の上で、本当にアドリブか?と聞くと、小木さんが「聞いちゃった……」と笑い、「今さら違ったら最低だよね」と矢作さんも笑う。「よく言われますがアドリブなんです」とひとりさんは言い、「(本当か?と)そう言われるのは褒め言葉といえば褒め言葉。アドリブに見えないぐらいのことをやっているんだろうなと」としみじみと語り、「僕のせりふや立ち回り以外にも、カメラワークというのがある」とアドリブに見えない要因を分析する。
ひとりさんは「リハーサルもなくいきなり撮れないだろうと思うかもしれないが、(スタッフは)周到に準備をしているみたい」と明かし、「カメラ10台以上で、(役者さんたちの)リハーサルでは“仮想・劇団ひとり”として僕と同じくらいの背格好の役者さんが『劇団ひとりはこう動くのでは』というのをあちこちやる。その時にどこからでも顔が撮れるようにというのは計算するみたい」と撮影の裏側を明かした。ひとりさんの発言を聞いた矢作さんが、「本人のアドリブもそうでしょうけど、カメラマンさんも撮り直したいところいっぱいあるんだろうね」と苦労を思いやる。
アドリブであることを感じさせないひとりさんの演技だが、常にシチュエーションを想定しているのだろうか。ひとりさんは「あまり考えないようにしている」と明かし、「考えちゃうとそれじゃない時に慌てちゃうので、なるべく真っ白な状態でやるようにはしている」とフラットな状態であることを強調。ひとりさんのせりふもすべて即興だが、言葉に詰まることなく最後まで言い切っている。ひとりさんは「アドリブ芝居の七不思議の一つで、アドリブはかまない」と断言し、「実はせりふの方がかむ」といい、「日常生活やインタビューに答えている時も、あまりかまないじゃないですか。何かこれを言うんだと決めている時のほうが実はかみます」と不思議がる。
言葉に詰まることなくさまざまなせりふを生み出すひとりさんの演技を見て、矢作さんは「もう慣れてるからアドリブで何かやっていることに対しての驚きはない」とつれない様子も、「いいせりふが出てきた時はすごいなと思う」と素直に絶賛。小木さんも「リズムもすごい」とテンポよくせりふが出てくることに驚く。矢作さんは「どこかで聞いたことがあるようなせりふだけど、多分、自分が好きなせりふみたいなものがインプットされているんでしょうね。それがパッとどこかの引き出しから出てくるんだろうなという感じ」とひとりさんの演技を評し、「せりふが本当に海外ドラマで聞いたようなせりふ」と傾向を分析し笑う。
続けて、矢作さんが「普通では使わない言葉というか、生きていく上では使わない言葉だけど、面白い表現というのが、いろいろ入っているんでしょうね。いろんな作品を相当見ているのでは」と見解を語ると、ひとりさんは「ありがたいですけど、なかなかこういう機会じゃないと褒めてくれない……」と冗談めかして喜んでいた。
アドリブ芝居も見どころだが、いかにキスを我慢するかが企画の根底にある。キスを我慢するシーンで心掛けていることを「まず唇が当たらないこと」とひとりさんがいうと、おぎやはぎから「当たり前だよ、一番の基本(笑い)」とすかさずツッコミが入る。ひとりさんは「あまり手を使わないことも気を付けているかもしれない」と続け、「胸を直接触るのはルール違反な気がして、自分の中で自主規制している」と自身に課したルールを明かし、「ミニスカートをはいている時の太ももの内側とかはすごい手を入れたくなるので、そこは抑えている」と強調しながらも、「行くときは顔で行く」と言い、笑いを誘う。
発言を受けて矢作さんが「顔はセーフみたいなことを言っているけどアウトだから(笑い)」と突っ込むと、「顔はセーフ。パン食い競争で手を使わない的な感じ」とひとりさんはめげずに持論を展開し、小木さんは「なんとくなく分かる……」と同調した。
キスを我慢する大変さについては、「本能の部分ですからすごく大変」とひとりさんはいい、「飢餓状態にある時、目の前にカレーライスを出されて我慢するというのと一緒」と例え話で大変さをアピール。さらに「僕は既婚者なので、若い女性に迫ってこられるというのはないですから、かなり苦しい」と本音をのぞかせ、「プロフェッショナルしかできない仕事。普通はみんな(キス)しちゃうと思う」と誇らしげな表情を見せる。これには「プロフェッショナルだよね」と矢作さんもうなずき、小木さんも「俺は耐えられない」と賛辞を送った。
今作では多彩な役者陣が顔をそろえる中、科学実験部の顧問の教師役として伊藤さんが出演。「まさか伊藤英明さんだとは思わず驚いた」というひとりさんは、共演シーンで「『今回は伊藤さんが主役なんだ』と思っていた」と振り返る。実は、ひとりさんは「1作目の映画をやった時に、次は主演に大物を使いましょうと提案していた」そうで、「伊藤さんと僕とペアでやっていくのかと勘ぐったくらい」と話し、「まさか伊藤さんがあんな形になるとは……」と伊藤さんの出演シーンに驚きを隠せない様子。
おぎやはぎはバナナマンとともに「ウォッチングルーム」と呼ばれる別室から展開を見守る役だが、小木さんは「見て楽しみたい」、矢作さんに至っては「(出演は)全然興味ない」と言い切り、ともに出演者になることは望んでいない様子。矢作さんは「大変だから自分が入って何かしたいとは思わない」と切り出し、「劇団ひとりのポジションはアドリブとしての大変さがあり、脇を固めるほうは劇団ひとりが言ってくることに対してアドリブで返さなきゃいけないし、ちゃんとしたせりふもあるから役者としてすごく難しい」とそれぞれの立場の難しさを説明。小木さんも「役者同士でリハーサルもたくさんやらないといけないだろうし……」と言い、ひとりさんが「面倒くさいわけか?」と突っ込むと、「えへへ……」と小木さんは笑ってごまかしていた。
ひとりさんは「『ゴッドタン』ファンはもちろん、マンガが好きな人」に見てほしいとアピール。「マンガ好きな人が好きな話だと思う。監督もマンガ好きな人だから、そういう意味でいうと“あるあるネタ”」と作風を評し、「前作もそうだけど、シチュエーションがとにかくいろんなマンガの“あるあるネタ”が入っているから、そういう楽しみ方もあるかなと思います」と紹介する。続けて、「でもこの映画の見どころは“ウォッチングルーム”」と発言すると、矢作さんは「そんなわけないだろう(笑い)」と突っ込む。ひとりさんは、「映画の中でウォッチングルームがあるというのは史上初」といい、「おぎやはぎとバナナマンは、史上初の『ウォッチングルーム・アクター』です!」と高らかに宣言し笑いを誘った。映画は全国で公開中。
<劇団ひとりさんのプロフィル>
1977年2月2日生まれ、千葉県出身。93年にデビューし、2000年にピン芸人「劇団ひとり」として活動を開始。一人で複数のキャラクターを演じる芸風が人気を呼ぶ。06年には初小説「陰日向に咲く」が100万部を超えるベストセラーになり映画化もされた。10年に出版した2作目の小説「青天の霹靂」は自身が監督して14年に映画化。俳優としても活躍し、映画「嫌われ松子の一生」(06年/中島哲也監督)や「八日目の蝉」(11年/成島出監督)、ドラマはNHK連続テレビ小説「純情きらり」などに出演した。また、来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の出演も決まっている。
<おぎやはぎさんのプロフィル>
1971年8月16日生まれ、東京都出身の小木博明さんと、1971年9月11日生まれ、東京都出身の矢作兼さんによるお笑いコンビ。高校時代からの同級生で、共にサラリーマンを経験後、1995年にコンビ結成。2002年のM−1グランプリで決勝に進出し注目を集める。バラエティー番組を中心に活躍し、「バイキング」(フジテレビ系/水曜レギュラー)、「ぶらぶら美術・博物館」「おぎやはぎの愛車遍歴」(ともにBS日テレ)、「天才!! カンパニー」(日本テレビ系)、「うまズキッ!」(フジテレビ系)など多数のレギュラー番組を担当している。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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