俳優の柳楽優弥さんの主演映画「最後の命」(松本准平監督)が8日に公開される。芥川賞作家の中村文則さんの同名小説が原作で、幼少期に集団婦女暴行事件を目撃してトラウマを抱えた2人の男が、凄惨(せいさん)な記憶に人生をゆがまされながらも生きる希望を見いだしていく姿を描く。主人公の明瀬桂人を柳楽さんが、その親友の冴木裕一を矢野聖人さんが好演し、脇を固める実力派キャストとともに複雑なストーリーを見事に表現した濃密な展開は見応え十分。シンガー・ソングライターのCoccoさんが主題歌「Snowing」を歌うなど音楽も物語を鮮やかに彩っている。
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幼少期に集団婦女暴行事件に巻き込まれた明瀬桂人(柳楽さん)と冴木裕一(矢野さん)の2人。事件の記憶に苦しみながらも成人した桂人は、人と肌を重ねることにけがれを感じ、デリヘル嬢や心を病み入院をしている同級生で恋人の小泉香里(比留川游さん)との電話という最低限の人との関わりの中で暮らしている。ある夜、高校卒業以来7年ぶりに冴木と再会するが、桂人の部屋で顔見知りのデリヘル嬢が殺された状態で発見される。警察の取り調べを受けた桂人は、冴木がある事件で全国指名手配中の容疑者であることを知り……というストーリー。
原作が回想を中心にしたものだけに、どのように映像化されるかに興味津々だったが、巧みな表現で幼少期に犯罪に巻き込まれ人生を狂わされた男たちの心の闇が見事に描かれている。幼い頃の出来事がトラウマとなりそれを背負って生きていく人生は、登場人物たちのように極端な事例でなくとも、誰にでも起こりうることだ。今作は過去に苦しめられしばられ続ける人間の弱さやもろさが、痛いほど表現されている。人は誰でも自分の未来や理想は自身の中から自然に生まれ出てくるものと思いがちだが、今作を見ると、過去の苦しみや因縁が大きく影響を与えてしまうのでは……と考えさせられる。心に闇を抱えた桂人を演じる柳楽さんの目の演技が印象的で、他人が起こした事件によって破壊されていく人生を送る男を演じ切った。ラストに向けて賛否両論あると思うが、理不尽の先にある明るい希望を信じたい。文芸作品の映像化は難しいといわれる中、原作の世界観を見事に表現している。新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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