注目映画紹介:「ベイマックス」 ディズニー最新作 ロボットに託した兄の思いと少年の絆を描く

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 不慮の事故で亡くなった兄がロボットに託した思いと託された14歳の天才少年との絆を描いたディズニー長編アニメーション最新作「ベイマックス」(ドン・ホール監督・クリス・ウィリアムズ監督)が20日から公開される。舞台は、米サンフランシスコと東京をモチーフにした架空都市サンフランソウキョウで、ディズニー史上初の優し過ぎるロボット・ベイマックスと天才少年と仲間たちのアドベンチャー作。日本のポップカルチャーで育ったという両監督が、日本文化へのオマージュを随所にちりばめている。

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 最先端科学都市サンフランソウキョウ。ヒロ(ライアン・ポッターさん、本城雄太郎さん)は14歳の天才少年だ。幼い頃に親を亡くし、工科大学に通う兄タダシ(ダニエル・ヘニーさん、小泉孝太郎さん)とともに、叔母キャス(マーヤ・ルドルフさん、菅野美穂さん)の家で暮らしている。ヒロは自分の開発したロボットを使い、アンダーグラウンドのロボット格闘技に夢中だ。才能のむだ遣いを心配したタダシは、自分の大学にヒロを連れて行き、研究仲間やロボット工学の第一人者キャラハン教授(ジェームズ・クロムウェルさん、金田明夫さん)に会わせる。衝撃を受けたヒロは大学で学ぶことを決意し、発明に成功して飛び級で入学する権利を手に入れた。しかし、謎の事故でタダシは帰らぬ人に。心に深い傷を負ったヒロの前に、人々の心と体の健康を守るためにタダシが開発したケアロボットのベイマックス(スコット・アツィットさん、川島得愛さん)が現れる……という展開。

 冒頭、港湾都市の美しい景色に目を奪われる。主人公はロボットオタクの理系男子。ベイマックスは白くて風船のような真ん丸ボディーだ。癒やしを目的としたこのケアロボットからは、柔らかな感触が伝わってきそう。おどけた動きが笑いを誘うが、本人はいたって真面目だ。ゆるキャラとしてのほのぼの感はあるが、その実、死んだ兄が託した理想を背負ったという重い背景を持つロボットだ。頭脳は天才でもまだまだ子どものヒロは、なかなか兄の真の思いに気づかない。その結果、謎の仮面男との闘いが繰り広げられていく。空を縦横無尽に飛び、仲間と助け合う闘いは、日本の戦隊ヒーローものを見ているワクワク感とハリウッドのSF大作のような見応えがあって飽きさせない。その冒険の核心には、兄を亡くした弟のヒロが、肉親の突然の死をどう乗り越えるのかという深いテーマも横たわっている。孤独のままにさせない仲間(兄タダシの友人)たちの存在、そしてポワンポワンとして柔らかいもの(ベイマックス)に包まれる心地よさ…‥これらに今後のグリーフ(悲嘆)ケアのヒントが隠されているように感じた。同時上映は短編アニメーション「愛犬とごちそう」。TOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほかで20日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今月公開作で一番泣けたのは、シンガポールの映画「イロイロ ぬくもりの記憶」(アンソニー・チェン監督)でした。

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