死霊高校:製作のジェイソン・ブラムに聞く オスカー話題作「セッション」との意外な共通点 

「死霊高校」を手がけたプロデューサー、ジェイソン・ブラムさん(C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
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「死霊高校」を手がけたプロデューサー、ジェイソン・ブラムさん(C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

 深夜の高校に、ビデオカメラを手に忍び込んだ高校生4人の恐怖の体験を描いた映画「死霊高校」(クリス・ロフィング監督、トラビス・クラフ監督)が、現在公開中だ。POV(主観映像)を駆使した今作を製作したのは、「パラノーマル・アクティビティ」(2007年)や「インシディアス」(10年)といったホラー映画を手掛けてきたスタッフたち。プロデューサーのジェイソン・ブラムさんは、今年の米アカデミー賞で、J.K.シモンズさんに助演男優賞をもたらした映画「セッション」(14年)のプロデューサーでもある。このたび、電話インタビューに応じたブラムさんが、今作に関わることになった経緯や独特の撮影方法、さらに、「セッション」との意外な“共通点”などを明かした。

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 ――今作のどのような部分がブラムさんの心をとらえ、プロデュースすることを決めたのでしょう。

 一番は、POV形式の作品は偽物っぽく感じるものが多い中で、この作品は“本物”だと感じられたことだ。俳優たちの演技も真に迫っていたし、ストーリーも独創的だった。最初に見たのはラフカット(映像を粗つなぎしたもの)の状態で、公開されたものとはかなり違ったけれど、作品が持つDNAは当時とは変わっていないよ。

 ――4人の高校生に、リース・ミシュラーさん、ファイファー・ブラウンさん、ライアン・シューズさん、キャシディ・ギフォードさんという無名の4人を起用した理由は?

 今回珍しいことに、キャスティングディレクターはいなかった。オンライン上に広告を打って、キャストを探したと聞いている。POVの映画を撮るときのカギは、無名の俳優を使うことにある。だから、あまり知られていない俳優を選んだ。映画の中では即興がかなりあったけど、オーディションでも演技と即興の能力で選んだんだ。

 ――シューズさん演じるライアンがビデオカメラを回しているという設定ですが、撮影はどのようにされたのでしょう。実際にシューズさんが撮影した場面はありますか。

 通常なら撮影監督がカメラを回すけれど、今回は俳優、特にライアンがほとんど撮影したと聞いている。彼は撮影に入る前、カメラの持ち方を随分練習させられたらしい。カメラを持って、しかも、ぶれないように演技をするのは、かなり難しいからね。

 ――音響も怖さを後押ししていました。

 ホラー映画では、サウンドは重要なツール(道具)で、ともすればカメラより重要なんだ。だからサウンドにはかなり気を使い、時間も費やしている。今回も音響のミキシングはすべて自分たちで行った。僕たちの映画に多く関わった音響のスタッフたちが、「セッション」でオスカーを受賞(音響賞)したときはとても誇りに思ったよ。

 ――プロデュース作品が、ホラー映画に特化しているのはなぜでしょうか。

 子供の頃、性格がゆがんでいたんだ(笑い)。僕の“ホラー映画好き”の根底には、ホラー映画ファンの存在がある。僕みたいなホラー映画ファンは、ちょっと変わり者で、周囲となじめないところがある。だから、ホラー映画好きの人たちには“似たもの同士”のような感覚を抱くんだ。日本で、ハロウィーン(毎年10月31日に行われるお祭り)がどのぐらい知られているか分からないけど、米国ではとても盛り上がるお祭りなんだ。ハロウィーンのコスチュームは、だいたい8週間前…毎年8月頃から母と作り始めていたよ。

 ――先ほど話題に上った「セッション」ですが、ブラムさんが手掛けてきた作品の中では異色に映ります。ホラー映画と「セッション」のような作品に関わる場合、プロデューサーとしての視点や立場に違いはありますか。

 映画におけるプロデューサーとしての役割は、作品ごとに違うものだ。でも、それはジャンルの違いからではなく、誰がその作品に関わっているかによる。確かに、「セッション」と「死霊高校」では、僕の関わり方は異なっていた。でも、「死霊高校」と「インシディアス」、「パラノーマル・アクティビティ」でも関わり方は違った。つまり、すべての作品において、僕の仕事は異なっている。ただ、得てしていえることは、僕の関わり方が大きいということは、それだけ問題が多いということ。つまり、自分があまり関わっていないときは、その作品はほぼ順調に進んでいるということなんだ。

 ――米国の観客はホラー映画を、劇場で大勢の人たちとキャーキャー言いながら見ているイメージがあります。かたや日本は、カップルや友人同士、あるいは一人で「ひっそり」と見ることが多いのですが、そういった日本の観客に、この作品の楽しみ方のアドバイスをお願いします。

 まず、映画館に行く前にビールでも1杯飲んでおくといいと思うよ(笑い)。確かに、日本と米国とでは、観客の映画の見方に違いがあるのは知っている。でも僕は、むしろ米国人は、もっと静かに見るべきだと思う。日本と米国の中間ぐらいがいいのかもしれないね。

 ――ちなみに、今回の作品でブラムさんが最も震え上がった場面を教えてください。

 オープニングだね。ホラー映画だからそれなりの心構えで見始めるけれど、あの、子供たちの演劇の場面での嫌な予感はたまらないね。

 映画「死霊高校」は、新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 米俳優イーサン・ホークさんと立ち上げたマラパルテ・シアター・カンパニーの製作ディレクターとしてキャリアをスタートさせる。現在は、低予算ながら高品質の作品をプロデュースする製作会社「ブラムハウス・プロダクションズ」の創立者兼CEO。これまで「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ(2007年、10年、11年、12年、14年)、「インシディアス」シリーズ(10年、13年)、「パージ」シリーズ(13年、14年)などを製作。そのほかの製作作品に「ハムレット」(00年)、「愛を読むひと」(08年)、「セッション」(14年)などがある。M・ナイト・シャマラン監督作「ヴィジット」が日本では10月23日に公開。ほかの公開待機作として「Paranormal Activity:The Ghost Dimension」(全米公開10月23日)がある。

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