注目映画紹介:「ローマに消えた男」 政治家と替え玉の弟をイタリアの名優が一人二役で演じる

映画「ローマに消えた男」のワンシーン (C)Bibi Film(C)Rai Cinema
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映画「ローマに消えた男」のワンシーン (C)Bibi Film(C)Rai Cinema

 「ゴモラ」(2008年)などで知られるイタリアの名優ト二・セルビッロさんが一人二役を演じた「ローマに消えた男」(ロベルト・アンドー監督)が、14日から公開される。失踪した政治家と、兄の替え玉となった双子の弟のミステリアスな物語。同国のアカデミー賞にあたるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で2冠に輝いた。

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 イタリア最大の野党を率いるエンリコ・オリベーリ(セルビッロさん)は、総選挙前だというのに支持率が低下していた。ある日、エンリコは重要な会議に姿を見せずに、自宅に書き置きを残していなくなる。妻のアンナ(ミケーラ・チェスコンさん)から双子の弟ジョバンニ(セルビッロさん)の存在を知らされた腹心の部下アンドレア(バレリオ・マスタンドレアさん)は、エンリコの失踪を周囲に隠し、ジョバンニにエンリコを演じてもらうことにする。一方のエンリコは、25年ぶりに元恋人のところを訪れていた……という展開。

 顔はそっくりだが、性格がまるで違う双子の兄弟。兄のエンリコは慎重派でもの静かな政治家。弟のジョバンニは哲学者で弁舌がなめらか。ジョバンニをエンリコと間違えたジャーナリストがいたことで、替え玉作戦がスタートする。エンリコとジョバンニの間には、疎遠となってしまった確執があるようだ。大人の誰もが社会的な役割としての仮面をかぶって生きているが、エンリコは重圧から逃れて仮面をはずし、若き日の一番いい思い出の中に逃げ込んだ。ジョバンニは、自分とは無関係の政治家の仮面をかぶり、堂々とこのゲームを楽しんでいく。双子のDNAは一卵性双生児の場合、基本的に同一とされるが、環境や生活習慣で性格は異なっていくという。正反対の性格の2人がどんな過去を歩んできたのか。兄弟の過去について言及するパーツは少なく、若いときの1枚の写真が物語るのみ。お陰でいろいろと想像させられる。セルビッロさんの名人芸のような芝居で、さらにミステリアス度がアップしており、ラストシーンにはうならされる。「ふたりの5つの分かれ路」(04年)のバレリア・ブルーニ・テデスキさんが元恋人役で出演。「そして、デブノーの森へ」(04年)のアンドー監督作。恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)ほかで14日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。どうでもいいことですが、個人的に子供のころから双子に憧れがあります。

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