5日公開された「セーラー服と機関銃-卒業-」(前田弘二監督)。これまで薬師丸ひろ子さんら名だたる女優が務めてきた人気シリーズの主演を務めるのはアイドルグループ「Rev.from DVL」の橋本環奈さん。同作のメガホンをとった前田監督に、撮影エピソードや主演を務めた橋本さんへの思いなどを聞いた。
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「セーラー服と機関銃-卒業-」は、赤川次郎さんの「セーラー服と機関銃・その後-卒業-」が原作。18歳の女子高生で元ヤクザの組長・星泉を橋本さん、泉が憧れる年上の男性・月永を長谷川博己さん、泉らに立ちはだかる組織の男・安井を安藤政信さん、泉が束ねる目高組の若頭を武田鉄矢さんが演じている。前作「セーラー服と機関銃」は1981年に薬師丸さん主演で映画が公開された。ドラマ化もされ、82年に原田知世さん、2006年に長澤まさみさんが主演している。
前田監督が映画化の話を聞いたのは約3年前。プロデューサーから話を聞き、「面白そうなので、即答で」引き受けた。名作の続編という形だが、新しく製作するうえでは「(前作を)崇(あが)めて近づけるのではなく、新しい形として作ることを意識した」と当時の意気込みを明かす。ただ、もちろん前作をまったく意識しなかったわけでもない。「薬師丸さんが輝いていて、そのときしか撮れない映画だったので、そこはやっぱり引き継がなきゃなと。橋本環奈主演で、星泉が一番輝けるように、という思いがあった」と語る。
誰もが知る前作の続編。だが、前田監督はプレッシャーより「楽しみの方が強くなっていった」という。「ヤクザ映画とかやったことなかったし、ワクワクしたというか……。当時、相米慎二監督やスタッフは挑戦していたと思うんですよね。じゃあ、僕らも楽しみながら挑戦しよう、と」。昼に撮影し、夜は“部室”と名付けた居酒屋で翌日の撮影のプランを話し合うことも。「明日はどんな遊びしようか、とか(笑い)。よくも悪くも悪ノリしちゃうというか。楽しんでましたね」と充実した表情で話す。
橋本さん主演で撮影を進める中で、特に意識したのが「彼女の持っている表情を全部映しこむ」ということだった。そのために、安藤さんら共演陣もあえてアドリブを入れ、橋本さんの中の“星泉”の本気を引き出すことを目指したという。「(安藤さんに)『彼女が本気で機関銃を撃てるようにしてください』と言ったら、(安藤さんが)OK、と笑って、(アドリブで)コップを本気で投げつけて……。『これで彼女も機関銃撃てますよね』と(笑い)。それで橋本さんも、負けられねえ、みたいな」と撮影中のエピソードも披露する。
元ヤクザの組長という、肝が据わっていなければならない役への橋本さんの抜てきだったが、「最初に(橋本さんに)会ったときに、『私、普段はアイドルやらせていただいてるんですけど、アイドルが映画に出て、あーこういう感じね、みたいになるのは絶対嫌です』と言われて(笑い)。根が明るいのがすごく良くて。沈んで湿っぽくなるシーンが多いんですけど、この子ならいけるかな、という人間力、明るさと強さを感じた」と橋本さんへの信頼を口にする。とはいえ、今作が映画初主演。当初は「正直、どこまで耐えられるか未知数だった」とも明かすが、そうした不安も、山をどんどん越えていく姿を見て、期待感に変わっていった。「やっぱり人間力というか。芝居うんぬんというより、場の空気をポーンとひっくり返せる明るさがあるのって、めったにいる人じゃないと思う。訓練で身につけられるものではない。妙なスター性がありつつものびのびとしていて」と前田監督は絶賛する。
改めて、前田監督はこの作品をどう自身の中で位置づけているのだろうか。コメディータッチであったり、ヤクザ映画の要素もあり、学園モノとしての描写もある同作だが、前田監督は「いろんなジャンルを渡り歩いていくというか、垣根を越えていくというか。いろんな映画を“ひとつの映画”で体感していくという体験をやってみたかったので、(いろんな要素を)突っ込めたかなと思います」と満足気に語った。
まえだ・こうじ。1978年生まれ、鹿児島県出身。2011年に「婚前特急」で劇場公開映画の監督としてデビュー。第33回ヨコハマ映画祭新人監督賞、第21回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞、第3回TAMA映画賞を受賞。ほか「夫婦フーフー日記」(15年)など。
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