俳優の佐藤健さんが主演する映画「世界から猫が消えたなら」(永井聡監督)が14日に公開される。余命わずかと宣告された郵便配達員が、自分と同じ姿をした悪魔と「世界から何かを一つ消すことで、一日の命を得る」という取引をしながら、かつての恋人や親友、家族との絆を確かめていく愛の物語。佐藤さんが主人公の郵便配達員の「僕」と「自分と同じ姿をした悪魔」の2役で、佐藤さんと初共演となる宮崎あおいさんが「僕」のかつての恋人「彼女」を演じ、「僕」の親友役で濱田岳さん、「僕」の両親役で奥田瑛二さんと原田美枝子さんも出演している。
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原作は「モテキ」や「電車男」などを手がけた映画プロデューサーの川村元気さんのベストセラー小説で、2013年の本屋大賞にノミネートされたほか、マンガ化やラジオドラマ化もされた。映画は「ジャッジ!」の永井監督がメガホンをとり、「イグアナの娘」「君の手がささやいている」「ちゅらさん」などで知られる岡田惠和さんが脚本を担当。音楽は「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」の小林武史さんで、主題歌「ひずみ」は、米ロサンゼルス生まれの新人女性歌手HARUHIさんが歌っている。
愛猫「キャベツ」と暮らす30歳の郵便配達員の「僕」は、ある日の午後にひどい頭痛に見舞われ、自転車で転倒。病院で診てもらったところ脳腫瘍が見つかり、余命わずかと宣告されてしまう。事実を受け入れることができないまま家へと戻った「僕」の前に現れたのは、自分と同じ姿をした「悪魔」を名乗る男。「僕」は「悪魔」に言われるまま「世界から何かを一つ消すことで、一日の命を得る」という取引を交わしてしまう。最初に電話を世界から消すことにする「悪魔」。電話を消すことで一日の命を得た「僕」だったが、かつて一本の間違い電話をきっかけに出会った「彼女」との思い出も電話とともに世界から消えてしまったことを知る。「悪魔」は映画や時計を次々に消し、さらに猫さえも世界から消そうとするが……というストーリーだ。
「悪魔」が消そうとする“もの・こと”はすべて、「彼女」「映画マニアの親友」「時計屋を営む父さん」「僕と猫に優しかった母さん」といった「僕」のこれまでの人生にとって大切なものへとつながっていき、この世界は「かけがえのないものでできている」という事実と、それでも「命よりも大切なものはあるのか?」という疑問をくっきりと浮かび上がらせていく。とりわけ「映画マニアの親友」が「僕」のため人生の最後に見る一本を懸命に探し出そうとするシーンと、「母さん」から「僕」へと向けられた無償の愛が語られるシーンが胸を打つ。「僕」の2匹の愛猫、初代の「レタス」と二代目の「キャベツ」も、“どうしちゃったの?”と思うくらいおとなしく従順、文字通り「借りてきた猫」状態で、猫好きとしてあまりの可愛らしさに“キュン死”にしそうにもなった。
淡い色彩でカメラに収められた北海道の函館・小樽の町並みをはじめ、バックの風景はどれも絵画のような美しさで、ブラジルとアルゼンチンにかかる世界遺産「イグアスの滝」も「僕」と「彼女」のその後を暗示するかのように、雄大な姿のまま画面に登場する場面も見どころだ。映画は14日からTOHOシネマズ六本木ヒルズ(東京都港区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)
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