呪術廻戦 死滅回游 前編
第59話「仙台結界」
3月26日(木)放送分
さまざまなデバイスやサービスによって普及が進む電子書籍。昨今ではついに同人誌業界にも電子化の波が押し寄せている。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点で電子書籍化の同人誌ならではの利点と問題点を検証する。
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“薄い本”、いわゆる同人誌が電子書籍化しているのをご存じでしょうか。
これまでにも実施されていましたが、夏コミの開催を間近に控え、ついに先日同人誌取り扱いの大手「とらのあな」でも、そのサービスが開始されました。さっそく自身でも購入してみたのですが、専用ビューアーの操作性などの好みはあれ、通常の電子書籍と同じく“いつでも買える・どこでも読める・何度読んでも劣化しない”という利便性に加え、同人誌特有の悩みでもある“完売再販予定なし”を恐れずに済むのは何ともうれしいところ。
ですが便利すぎる新サービスには何かと不安もつきもの。まだまだ一般化には程遠い普及率ですが、今後どんな問題や変化を引き起こす可能性があるのか……ちょっと検証してみようと思います。
っとその前に、そんな私の個人的な経歴ですが、思い返せば小学校3年生の時、定番ですがジャンプ系のコミックアンソロジーをきっかけに同人の世界を知り、その年から地元の即売会へ一般参加しながら同人誌やグッズを集め、小6で初めて定額小為替での同人誌通販を経験するなど、読み手として活動を始めました。
その後は高2で自作HPを作り、ゲーム系ジャンルでイラスト・小説の創作を開始。高3で初めてコミケに一般参加してからは会場の創作熱に感化され、ニコニコ動画やpixivへの作品投稿も始め、3年前い初めてサークル参加したコミケでは、オリジナルですが頒布用CDの共同制作をするなど、作り手としての活動もしてきました。同人歴は数えて18年ですが正直まだまだ若輩者…しかしこの世界にどっぷりつかってきた身としては、同人誌の電子書籍化というのはなかなかにセンセーショナルな出来事でした。
さてさて本題に戻りますが、「同人誌の電子書籍化」と聞いて、何よりもまず危機感を抱いたのは“スクリーンショット”の存在です。写メやコピーによる複製や無断転載自体は電子書籍化以前からの問題ですが、スクショ機能のあるPCやスマホでの同人誌の閲覧は、それらをより手軽に、高画質で可能にしてしまいます。
メモやスクラップ代わりにお気にいりのページを保存するには便利な機能なのですが、データのプロテクトは可能でも、スクショに至っては防ぎようがないため、個人で楽しむ以上に乱用されないことを祈ることしかできないのが現状です。
そしてもうひとつ、いち同人参加者として危惧してしまったのが、同人誌の電子書籍化が“価値観の変化”を引き起こさないか、ということ。実際に電子書籍版の同人誌を読んでみると、正直pixivを見ているみたいでした。
それがいったい何を意味するのか……。例えば極端な話、「同じ二次創作でも、なぜpixivの作品は無料で見られて、電子書籍の同人誌は有料なの?」という疑問や、「電子書籍で頒布している人は金もうけ目当て。タダでpixivに上げてくれる人は神」という、作り手側の首を絞めるような恐ろしい風潮が生まれてしまうのではないかと不安に思ってしまったのです。
作り手側での個人的な活動経験から考えると、投稿作品と頒布物それぞれの作品にかける時間と労力と思い入れは「できたよ! よかったら見てみて!」と公開し、後から修正や上げ直しも可能な“ブログ記事”と「よし、誤字脱字ないよな、書式間違ってないよな、どうか読んでください!」という覚悟で提出する“論文”くらいには違います。とは言っても、それはあくまで作り手個人の感覚であり、残念ながら作品を手に取った人には伝わりません。
しかしその、「無料でいい作品が見られて当たり前」という価値観へのかたよりは、結果的に、最初に挙げたスクショで大量拡散することへの罪悪感の薄れをも誘発してしまう問題だと思います。
市場規模の拡大と共に形骸化していないとは言い切れませんが、本来の同人文化とは、売り手と買い手による「商売」ではなく、あくまでファン同士の活動であり、作品は商品ではないため、渡すお金も創作活動そのものに対する「善意のカンパ」である……という認識を忘れないことが、これらの問題へのひとつの防御策になってゆくのではないでしょうか。
しかし多少の懸念こそあれ、読み手としてはやはり便利なサービスであることはいなめませんし、作り手としても、海外への配信も可能だったりと、一番の目的である「作品をより多くの同志に見てもらえる機会」を与えてくれる点を考慮すると、個人的には同人誌の電子書籍化には期待の方が大きいです。
ただし、その便利さを享受していくためには、作り手、読み手共に文化の担い手であり、自分たちが楽しむための同人という場所を守っていくのも、自分たちであることを忘れず、常に問題や変化の可能性に目を向けていく必要があるのでしょう。
とはいえ、これまでもさまざまな問題が起きながら存続してきた文化なので、今のところそこまで心配はしていません。ただ、「おばちゃん、“薄い本”ってなあに?」。そんな言葉を耳にする日がいつか来るのかもしれませんね……。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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