ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
「君の名は。」「シン・ゴジラ」が興行成績1、2位となり、邦画が大豊作といわれた2016年。劇場版アニメ「この世界の片隅に」も“単館系”作品ながらロングランになった。テレビなどで大宣伝する超大作ではない作品が興行的にも成功し、映画界では“SNS元年”ともいわれている。「この世界……」を中心に、ネットの口コミデータから、“ヒットの理由”をひもといてみた。【猪狩淳一】
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「この世界……」は、「漫画アクション」(双葉社)で連載され、2009年「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門優秀賞を受賞した、こうの史代さんのマンガが原作。「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督がアニメ化した。戦時中、広島・呉に嫁いだ18歳のすずの日常と戦争を丹念に描いた。クラウドファンディングで約4000万円を集め、パイロット版を制作して、劇場版制作の資金を調達した。昨年11月の公開当初の上映館数は63館だったが、じわじわと広がり続けて年明けには200館を超え、観客動員も100万人を突破している。
ネットの口コミなどを調査するホットリンクの「クチコミ@係長」によると、公開から1カ月間でのツイッターでの口コミ数(10%をサンプリング)は約2万1000件。興行収入232億円を突破する記録的なヒットとなった「君の名は。」は約25万件と桁違いで、2位の「シン・ゴジラ」が約8万件と続く。
「この世界……」の2万件は、「ズートピア」「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に続く口コミ数5位で、興収5位の「ファインディング・ドリー」の約1万8000件を超えている。同作が2016年の全米興行収入1位を獲得したディズニーアニメというメジャー作品であることを考えると大健闘だ。
特徴的なのは、「エンドロールの最後」「エンドロール」といった言葉が頻出、形容詞では「良い」「すごい」「素晴らしい」といったポジティブな言葉が多いのはもちろん、「うれしい」「ほしい」も多かった。
この頻出語とクラウドファンディングによる資金調達手法は関連している。通常のエンドロールが流れる中ですずたちの後日譚(たん)が描かれた絵が映される。その後、クラウドファンディングに参加した約3000人の名前が紹介される「もう一つのエンドロール」で、原作で描かれながらアニメではカットされたというあるキャラクターのストーリーが印象的なアニメーションとして語られる。非常に長いエンドロールだが、これを含めて作品ということで、「#エンドロールの最後まで」というハッシュタグが付けられるほど、口コミの重要な要素となった。
「ほしい」という言葉も「原作」や「たくさんの人」「映画館」と組み合わせて使われることが多く、多くの人に薦めるコメントが大半で、クラウドファンディングの出資者や原作ファンが作品の広がりを後押ししているようだ。
映画コメンテーターの有村昆さんは「『君の名は。』『シン・ゴジラ』もテレビで宣伝する手法より、個人のSNSの口コミ拡散力が強くなった。拡散された作品が素晴らしかった面もあるが、まさに“宣伝SNS元年”といえる。映画界全体が変わり始めている」と分析する。片渕監督も「初めからお客さんの応援があった」と語る。この作品のヒットが、今後の日本映画に与える影響は大きいかもしれない。
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