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11月21日(木)放送分
3月に死去した俳優の渡瀬恒彦さん主演の連続ドラマ「警視庁捜査一課9係」(テレビ朝日系、水曜午後9時)に、9係の刑事・小宮山志保役で出演中の羽田美智子さん。4月期のシーズン12の放送開始直前に主演の渡瀬さんが亡くなり、撮影現場は大きな悲しみと虚脱感に包まれたという。羽田さんに、そのときの状況とスタッフ、キャストの思い、今後について聞いた。
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「警視庁捜査一課9係」は、2006年4月に放送を開始し、今年で12年目を迎える人気刑事ドラマ。警視庁捜査1課の中でも検挙率ナンバーワンを誇る9係の刑事たちが、それぞれの事情を抱えながらも、事件を前に一つにまとまり、鮮やかに解決していく。
第12シーズンは、9係係長・加納倫太郎役の渡瀬さんが神田川警視総監(里見浩太朗さん)の命令で、内閣テロ対策室を改造するための準備委員会のアドバイザーを兼務することになり、9係は係長不在となる設定でスタート。羽田さんや人気グループ「V6」の井ノ原快彦さんのほか、吹越満さん、田口浩正さん、津田寛治さんらおなじみのメンバーの活躍を描く。新たに竹中直人さんが出演するほか、直樹(井ノ原さん)が以前、恋敵と勘違いした中村俊介さん演じる園田俊介がシーズン2以来、再登場している。
渡瀬さんは3月14日に多臓器不全により亡くなった。病室にドラマの台本を持ち込み、前日には打ち合わせもこなしていたという。羽田さんは「第1、2話を撮っている最中に訃報が飛び込んできました。それもあって1、2話の撮影は精神的にも、ドラマ的にもバタバタだったんです。私たち(キャストは)絶対に渡瀬さんが戻ってきてくださるという前提で撮っていて、『みんなで場を盛り上げて渡瀬さんを(現場に)お迎えしようね』と言っていたんです。目標がそこだったので、気持ちがぽきっと折れてしまって。私たち、どこに向かってやっていったらいいんだろうかって、誰もが路頭に迷うような感じになったんです」と明かす。
「渡瀬さんの穴が大き過ぎて、心にぽっかり大きな穴が開いてしまって放心状態になってしまいました。虚脱感っていうんですかね……。ちょっと言葉では表せないくらい」とこれまでに経験したことのないような状態に陥った。
とりあえずキャストで集まろうと、「亡くなったというニュースが届いた日にみんなで集まって。その場で、とにかくたくさん泣いたんです」という。泣いたあとに「でも、この船(ドラマの撮影)は走り出してしまっているし、とにかく(前に)行かなきゃいけないんだよって。渡瀬さんが作ってきてくださった11年間があったので、渡瀬さんだったらこういうときにどういうふうに言うかなとか、渡瀬さんならどうしていたかなと、常に渡瀬さんを意識して、渡瀬さんのことを感じながら、みんなで話し合って撮影を続けました」と語る。
完成したドラマの第1話を見て「監督が見事に、渡瀬さんのオマージュのような作品を作ってくださっていました。完パケを見て納得したんです。不思議なことに渡瀬さんは(設定上は)そこから抜けているんですけれど、魂がそこ(画面内)にいてくださるようで。実際、撮影現場でも『そこにいる』と感じられました」と姿は見えないが、渡瀬さんの存在を感じられたという。
羽田さんは続ける。「渡瀬さんは、同じメンバーで続けて、でも新しい時代も読んでいかなきゃいけないということ、また、お客さんのためにやっていることだから楽しませなくちゃいけないということを常に、おっしゃってはいないけれども態度で示してくれていました」と渡瀬さんからのメッセージを現場で受け取った。
「渡瀬さんは進化することをいつも望んでいたから、私たちも進化しなくちゃいけないときなんだと。渡瀬さんがいらっしゃらない9係を、渡瀬さんがいるつもりでやるということでメンバーの意思が統一されて、その船の乗組員として今は演じているという感じです。渡瀬さんは、本当にいいメンバーを残していってくれたねって。11年間の積み重ねは大きかったと改めて思いました」とみんなの気持ちがまとまった。
渡瀬さんは後輩に“背中”で伝えるタイプだったという。羽田さんは「これとこれとこれを教えてくれたということではなくて、俳優として生きていくために必要なすべてを、言葉ではなく態度で示してくれていたんだなと思ったんです」と話す。
現場では「渡瀬さんのまねをして現場を締める人が出てきたり、渡瀬さんはせっかちな方だったので、例えば現場が(午前)9時に始まりますと予定に書いてあっても、8時半に始まる現場だったんです。その習慣がしみついていて、私達も習性で8時半に入っちゃうんですよ。そんなところに“渡瀬イズム”が残っているのかな」と”渡瀬イズム”を感じながら撮影は進んでいるという。
「とにかく現場でテンポよく動くパキパキ動く、そんな姿を誰かが渡瀬さんの代わりになってやるという……。あるシーンでは、イノッチ(井ノ原さん)が渡瀬さんの代わりになり、吹越(満)さんが渡瀬さんっぽかったり。そんなふうに代わりばんこに渡瀬さんの代わりをやってくれている頼もしい仲間がいて、さらに絆はパワーアップしたのかな。これも渡瀬さんのお陰だと思います」と力を込める。
羽田さんは、「たぶんスタジオのどこかに渡瀬さんがいるのかもしれない。みんなそれを感じているんです。私もすごく感じるし、私だけが変わっていて、渡瀬さんと会話しているのかなと思ったら、そうじゃなくてみんなそうだった(会話していた)。『前より渡瀬さんと会話しているよね』って。渡瀬さんがこの作品自体をずっと見守ってくださっていることは間違いないし、不思議と、すごく渡瀬さんを感じる作品になっているんです」と感慨深げに語る。
「警視庁捜査一課9係」の今後については「続けたいって、みんなおっしゃっています」という。だが「どうなるのかは分からないですけれど。いつの世も私たち役者は、これが最後の作品だと思ってやっています。次があると思った瞬間に気が抜けてしまうから。これが最後だから悔いがないように、と。今回は特に悔いがないようにやり遂げたいなと思っています」と力強く語った。
「警視庁捜査一課9係 season12」(テレビ朝日系)は毎週水曜午後9時に放送。3日は第4話を放送する。
<プロフィル>
はだ・みちこ。1968年生まれ。茨城県常総市(旧水海道市)出身。女優として映画、ドラマ、テレビ、CM、ラジオなどで幅広く活躍。現在、テレビ朝日系「警視庁捜査一課9係 season12」(水曜午後9時)、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演中。また、毎週金曜午後7時に放送中の「その原因、Xにあり!」(フジテレビ)にもレギュラー出演。著者に「羽田美智子が見つけた 沖縄 すてき、ひとめぐり。」(光文社)、「羽田美智子 私のみつけた京都あるき」「羽田美智子 私のしあわせ京都あるき」(共に集英社)などがある。
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