注目映画紹介:「羊の木」関ジャニ∞・錦戸主演 過疎化など社会問題もはらんだサスペンス

映画「羊の木」の一場面 (C)2018『羊の木』製作委員会(C)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
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映画「羊の木」の一場面 (C)2018『羊の木』製作委員会(C)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

 人気グループ「関ジャニ∞」の錦戸亮さんの主演映画「羊の木」(吉田大八監督)が、3日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開される。過疎化が進む町で市の職員をしている月末一(つきすえ・はじめ=錦戸さん)は市に移住してくる6人の男女の受け入れを命じられる。その6人はすべて元殺人犯だった……という展開。それぞれの元殺人犯が醸し出す不穏な空気、とりわけ一番普通に見える宅配業者の宮越一郎(松田龍平さん)の存在が不気味だ。地方都市の過疎化の問題や元受刑者への偏見など社会的な問題もはらみ、考えさせられつつ、次々と殺人事件が起こる後半はスクリーンから目が離せなくなる。

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 映画は、山上たつひこさん原作、いがらしみきおさん作画の同名マンガが原作。月末が市職員として働く寂れた港町・魚深(うおぶか)市に、6人の元殺人犯が移住してくる……。6人の移住は、受刑者を仮釈放させ、過疎化が進む町で受け入れる国家の極秘プロジェクトで、ある日、港で発生した死亡事故をきっかけに、月末の同級生・文(あや、木村文乃さん)を巻き込み、小さな町の日常の歯車が狂い始める……というストーリー。元殺人犯役で、優香さん、北村一輝さん、市川実日子さん、水澤紳吾さん、田中泯さん、松田さんが出演している。「桐島、部活やめるってよ」(2012年)の吉田監督がメガホンをとった。昨年末に亡くなった深水三章さんの遺作となった。

 映像は全体に暗いトーンが多い。半魚人のような“のろろ”様をまつった地元の夜祭り、どこか陰のある移住者たち。そんな中で、市役所職員の月末の“普通の感覚”に何度かホッとさせられる。都会から出戻った同級生、文(木村さん)へのほのかな恋心、人なつっこく間に入ってきた宮越(松田さん)への軽いジェラシー……。バンド仲間の須藤(松尾諭さん)とのたわいもない会話など青春映画の要素を加えながらも、これまで何も起こらなかった過疎の町で殺人事件が起こり、人々が恐れおののく様子やラストのサスペンスフルな展開など見応えたっぷりに描いている。

 それぞれ元殺人犯たちが町に受け入れられていく様子を人情味たっぷりに描くなど、さまざまなジャンルの面白さを併せ持ち、バランス感覚も絶妙だ。見終わったあとに日本のコミュニティーについて深く考えさせられた。月末の老齢の父を好きになってしまう優香さんの色っぽい演技にも注目。(細田尚子/MANTAN)

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