ディーン・フジオカさん主演の映画「海を駆ける」が、26日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞した「淵に立つ」(2016年)の深田晃司監督がメガホンをとった。今年、日本との国交60周年を迎えたインドネシアのバンダ・アチェの美しい風景を舞台に、フジオカさん演じる謎の男を通して、国と宗教と言葉を超えた友情や自然への恐れなどを描き出した。不思議な魅力を感じる一作に仕上がっている。
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04年の大地震で壊滅的被害を受けたスマトラ島北端のバンダ・アチェの海岸に、一人の男(フジオカさん)が倒れていた。記憶喪失ではないかと思われたその男は、片言の日本語とインドネシア語を話せるらしかった。日本から移住し、NPOで災害復興の仕事をしている貴子(鶴田真由さん)が男を預かることになり、インドネシア語で海を意味する「ラウ」と名付ける。貴子の息子のタカシ(太賀さん)は仲間たちと共に、男の身元捜しに奔走するが……というストーリー。
深田監督の「ほとりの朔子」(13年)で共演した鶴田さんと太賀さんが日系人の親子を演じ、インドネシア語でのせりふに挑戦。タカシの親戚役を「2つ目の窓」(14年)などに出演した阿部純子さんが演じている。
ラウは海からやって来て、ただ、ほほ笑んでたたずんでいるだけの正体不明の男。生命に関わる力も持っているようで、謎めいている。フジオカさんの柔らかな風貌が役柄とマッチ。バンダ・アチェの雄大な風景の中に溶け込んで、「この男はなんだったのか?」と見る者に問いかけてくる。戦争や津波被害の傷あと、日本とインドネシアの共通した痛みにも目が向けられる。美しく穏やかな海辺と共に暮らす人々と町の姿も胸に迫ってくる。
深田監督が、2011年の東日本大震災の後、スマトラ島を訪れた際に着想を得て、脚本も手掛けたオリジナル作。ロケは全てバンダ・アチェで。日本、フランス、インドネシア合作。(キョーコ/フリーライター)
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