人気ゲームから生まれ、毎年夏の定番となっているアニメ「劇場版ポケットモンスター」。1998年の「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」から数えて、第21作となる「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」(公開中)は、これまでの20作で監督を務めてきた湯山邦彦さんからバトンを受け取った矢嶋哲生さんが監督を務めている。まんたんウェブでは、湯山さんと矢嶋さんの“新旧”両監督を迎え、湯山さんが“キミにきめた!”とばかりに矢嶋さんを新監督に選んだ理由や、選ばれた矢嶋さんの思いを聞いた。
ウナギノボリ
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「みんなの物語」の舞台となるのは、人々が風と共に暮らすフウラシティ。主人公のサトシと相棒のピカチュウは、伝説のポケモン、ルギアも現れるという1年に1度の“風祭り”に参加し、5人の仲間たちと出会う。5人がそれぞれ悩みを抱える中、“風祭り”でにぎわう街に思わぬ事件が巻き起こる……というストーリーだ。矢嶋さんが監督を務め、湯山さんがアニメーションスーパーバイザーを担当している。
「ミュウツーの逆襲」から昨年公開された「キミにきめた!」まで、製作期間を含めると20年以上にわたって監督を務めてきた湯山さん。実は10周年を迎えたあたりから、「そろそろ……」と、同名の「ポケモンわざ」ではないが、後進への“バトンタッチ”を意識してきたという。最終的にそんな湯山さんのバトンを受け取ったのがテレビシリーズ「XY」で監督を務めた矢嶋さんだった。湯山さんは「XYを見ていて(矢嶋さんが)アクションもドラマもいけるのは分かっていました。形のある食べ物を出してはいけなかったりと約束事の多いシリーズでもあるので、シリーズに関わっていることも大きかった」とも語るが、「何より若い! そこも決め手だった」と笑う。
今年33歳になる矢嶋さんは、小中学生の頃に初代「ポケットモンスター」を楽しんだ“ポケモン世代”だ。「初めて買ったのは『緑』でしたね。ニドキングが好きでした。初代はあんまり怪獣っぽいポケモンが少なかった印象もあって強そうで好きでしたね。おばあちゃんも『ボケ防止だ』って一緒に遊んでいて。学校から帰ってきたら強くなってたり(笑い)。今考えるとコミュニケーションツールになっていたのかな」と当時を思い出して目を輝かせる。
そんな若き新監督が紡いだのが、サトシと5人の仲間たちのドラマを描いた「みんなの物語」だった。幻のポケモン、ゼラオラにまつわる秘密を持つ少女ラルゴ、ポケモン初心者で、あるトラウマを抱える女子高生のリサ、自信が持てないポケモン研究家のトリト、うそがやめられなくなってしまった中年男のカガチ、ポケモン嫌いのおばあさん、ヒスイ。それぞれ悩みや葛藤を抱える人間くさいキャラクターだが、「コミュニケーション体験というか、初めてポケモンに触れたときの気持ちを思いだしてもらいたいという気持ちがあった」と語る。
「好きなように作ってくれと言われて、作りたいように作った」とおどける矢嶋さんだが、20年間ポケモン映画を手がけてきた前監督の湯山さんが驚いたことがあった。「カガチの職業が分からなかったり、いい意味で説明不足。それでもちゃんと伝わっているんです」と話す。デジタルネーティブならぬ“ポケモンネーティブ”の新監督にとって、ポケモンはあって当然のもので説明を必要としない。そうしたネーティブ世代としての強みが作品に新たなテンポと風合いを与えているようだ。
今年33歳、体重約140キロの矢嶋さんと、今年66歳、体重約70キロの湯山さん。年齢は半分で、体重は倍という異色のコンビに見える新旧両監督だが、2人ともインタビュー中はポケモンや、お気に入りのキャラクターのことをキラキラしたまなざしで語ってくれた。人気シリーズの“バトンタッチ”は見事に成功したようだ。
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