全領域異常解決室
第6話 神VS神 全面戦争!ここですべてがつながった
11月13日(水)放送分
俳優の長谷川博己さん主演で、1月19日にスタートする2020年のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。主人公は「本能寺の変」を起こし、主君・織田信長を自害させた人物としてあまりにも有名な安土桃山時代の武将・明智光秀だが、今回は史料がほとんど残っていない20代の青春時代から描くところが特徴だ。脚本は1991年放送の大河ドラマ「太平記」などで知られる池端俊策さん。歴史家の間で長年、研究の対象になってきたものの、若き光秀に関しては、どう転んでも推測の域を出ず、それこそ「想像するしかない」と言い切る池端さんに、今回の“挑戦”について語ってもらった。
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「麒麟がくる」は59作目の大河ドラマで、池端さんによるオリジナル脚本。私怨により本能寺で織田信長を討った謀反人のイメージを覆す、勇猛果敢かつ理知的な天才・明智光秀を、史料がほとんど残っていない20代の青春時代から描写する。
「ドラマは作るものであり、研究成果の発表の場ではない」と持論を語る池端さん。光秀に関していえば、「41歳で織田信長と足利義昭を結びつける以前、特に若い頃の史料が全くなく、それまで何をしていたのかが全く分からない」のが現状だ。歴史家・研究家がいろいろと書いたとしても、それらは推測でしかないため、「麒麟がくる」を執筆するにあたり、池端さんは「光秀が生まれてから41歳まで何をしていたのか、考えるところから出発した」という。
そこでヒントとなったのが、同時代に光秀の周囲に存在していた人物たち。斎藤道三や織田信長がこれに該当し、「信長にしても道三にしてもしっかりとした史料が残っていて、同時代人として光秀を描くということは、彼らとの関係を描いていくことになる。そのとき光秀はどういう顔をしていたのか。どういう性格で、どういう行為をしたのだろうか」と想像を巡らせた。
諸説あるものの、頭はいいけど性格は繊細で陰湿、最後は「私怨により本能寺で織田信長を討った謀反人」のイメージのある光秀。しかし、池端さんは「もっと客観的な光秀がいたはず」という考えで、「それはどういう顔をしていたのだろうか、どういう人物だったのだろうかは想像するしかないんです」と結論づける。
改めて「今までの明智光秀像を全くの白紙にした」と力を込める池端さんは、もう一つの執筆の軸に「自分が光秀だったら、どうだったろうか」という視点を据えた。若い頃の光秀の史料が全くなく「そう考えざるを得なかった」というのが本音だが、「僭越(せんえつ)ながら、自分が(光秀として)どう感じるかを書けばいいんだろうなと。道三を見てどう思ったのか、信長に会ったときにどう衝撃を受けたのか。割合はっきりしている人物たちに対するリアクションから光秀像を導き出していくというやり方しかないのではないか、と書いてはいます」と明かす。
そんな池端さんから見た「光秀の性格」とはどのようなものなのだろうか。「人間っていいところも悪いところもあるし、それを複眼的に見る力を持っていた人だと思います。信長とつながっていった人は皆そうで、この人はイケると判断を下した人ばかりなのですが、光秀もそういう“人を見る目”はあったのだろうなと。娘にたま(細川ガラシャ)がいて、正室の煕子(ひろこ)という人にも、いろいろな伝説がありますけど、非常に夫婦仲は良かったであろうと予測はつく。やっぱり優しい人ではあったのだろうと思いますね」としみじみ語る。
今回の「麒麟がくる」は、2017年放送の「おんな城主 直虎」以来、3年ぶりの戦国大河で、ファンの期待値は高いが、池端さん自身も執筆を「楽しんでいます」と明かす。「非常に著名な戦国武将が出てきますからね。その人たちと光秀がどう関わっていくのか、今までのイメージをちょっとずつ自分なりに解釈を変えて書くのは楽しくて。歴史上に起こったことははっきりとしているので、それら点をつなぐ線というのはこちらで自由にやれますし、戦国時代は本当にいろいろな人が出てきて、人物図鑑みたいなところがあるので、一つずつページを塗りつぶしていくような、そういう楽しさがある」と語った。
“歴史上に起こったことではっきりとしている”ものには当然、「本能寺の変」も含まれるが、池端さんは、本能寺の描き方のプランについては「もうできていますけど、それは言えません」とにやり。「克明ではないですけど、大体こういうことだろうなっていう、全体のアウトラインの帰結としての『本能寺はこうあるべき』というのは僕の中にあります。最初は『どうしようか、どうしようか』となっていたんですけど、ようやく見えてきました」と笑顔を見せていた。
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